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1816-2016:クロノグラフ200年記念時計


「もしこのフェイスで41mm以下だったら絶対アリなのになぁ~」と思う時計はけっこうある。

しかし今日紹介する時計は、なんと46mmという大型サイズながら、個人的には「うーん、全然アリじゃね?」と思わせてくれる逸品。

作品名は「Memorisー200th Anniversary Watch Basel」。
ブランドは、Louis Moinet (=ルイ・モネ)。


※画像をクリックすると拡大されます。
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シンメトリーを基本としながらも、ハーフスケルトンのダイヤルを透過してクロノグラフ・モジュールが正面から覗けるという大胆なデザイン。
加えて、ブリッジ裏に描かれた宇宙の星々がデザインの一部となって正面から見えるという発想も素晴らしい。

しかも、なぜ星が描かれているのか、なぜモノプッシャーのクロノグラフなのか、なぜルイ・モネがこのピースを出すのか、そうしたことのすべてが200年前のヒストリーに呼応しているという、歴史とかアストロノミーが大好物な当ブログからすると非常に”ツボ”な限定ピースなのだ。


「Memoris」自体は昨年に発表されたもので、そのフェイスがこちら。

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この段階では、星空は描かれておらず、青く彩色されたコート・ド・ジュネーヴ風の仕上げが覗くのみであったが、それが今年2016年のバーゼルで発表された記念モデルでは、星空に描きなおされている。


その理由を明かす前に、簡単にクロノグラフの歴史を紐解く必要がある。
クロノグラフの発明者は、(英国のジョージ・グラハムのストップウォッチの原型など諸説あるものの)、長いこと文字盤にインクを落として経過時間を計測する二コラ・リューセックが世界最古とされてきた。確かにクロノグラフという言葉は、その計測器に初めて名付けられたもので、クロノス(ギリシャ語の時間の意味)+グラフ(記録の意味)から得られたリューセック発明の造語だった、…確かに、2013年までは…。

2013年、歴史の中に埋もれていた時計職人、ルイ・モネ製作の画期的な懐中時計が”発見”されたのだ。

ルイ・モネは、天体望遠鏡で天体の正確な動きを観察するために世界で初めてのクロノグラフを考案し、これによって、天体望遠鏡の十字線の距離を正確に測ることができた。2016年ヴァージョンに宇宙が描かれたのはこの事柄へのオマージュなのである。



(以下ブランド資料より抜粋)
ケースバックにある刻印から、1815年に製作が始まり、1816年に完成していることが分かります。
中央の針は1/60秒を表示し、秒と分は2つの別々のダイヤル、時は24時間ダイヤルで表示されていました。

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クロノグラフのスタート、ストップ、リセット機能は2つのプッシュボタンで行うようになっており、この作品が、数年後にようやく登場することになる、現在業界で正式な名称として認められているクロノグラフに相当することは明らかです。
このクロノグラフは、当時としては革新的なリセット機能も備えていました。この機能はこれまで、アドルフ・ニコルが取得した特許に基づいて、1862年に開発されたものと考えられていました。
ルイ・モネ自身は、「...私は1815年に、60分の1秒計を作るためだけにパリに来た。構成が全く新しいこの計器は製作がきわめて難しく、試行されることはめったになかったが、私の目的にかなったものが完成した...」と書き残しています。
このクロノグラフ機構の振動数は、毎時216,000回(30Hz)という当時としては全く並外れたものでした。ちなみに、現代の腕時計の平均的な振動数は毎時28,800回(4Hz)です。ですから、ルイ・モネは高振動の先駆者であるといえます。実際、毎時216,000回を超える振動数で作動する別の時計が登場するまでに、ちょうど100年待たなければならなかったからです。


1816年にゼロ・リセットに21万6千振動とは(!)、にわかには信じがたい機構を持つ個体だが、現在のところではかなり多くの文献でこのルイ・モネがクロノグラフの嚆矢とされているのは間違いない。
2013年に発見され、復興していたルイ・モネ社が買い上げた。その際に製作された動画もご紹介しておく。
NPRキットによるレトロ・タッチのアニメーションでクロノグラフの歴史も学べる秀逸な作品だ。





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ケースだけでも52ピースの部品から成る17度角のモノプッシャー・クロノグラフ。
18KのWGとRGで、20本限定。46mm径・ 15.75 mm厚。

※この200周年時計の文字盤上に1806とあるのは、ルイ・モネ創業の年であり、有名な「ナポレオンの置時計(日付を表示する8日巻きムーブメントと、オルゴールが鳴り始めるとナポレオンと皇后ジョゼフィーヌの戴冠を眺めることができるオートマタ機構を内蔵する複雑時計)」が納品された年でもある。



(以下、日本における正規ディストリビューターである、Muraki LTD, Watch DivisionのHPより引用)

Memoris の宇宙

この200周年モデルはすべて排他的な装飾、クロノグラフプレートのためのミッドナイトブルーの特別な覆いであるセンターピースは、夜空の実際の色を映しだしています。多数のそれぞれの手作業で彫り込まれた星は輝き、それぞれ真新しい安定した彫刻テクニックを使って精密につくられます。これは、特別に作られた旋盤を伝統的なrose engineに取り付けることを伴っています(ギヨシェのための道具としても知られています。)。

このアイデアは、rose engineのパワーと手作業の精密さとを融合させることです。最終結果は、機械による圧搾や 押し型による模様の印字生産のそれとは異なります。素材が取り除かれるので、それが、guillocheuseと伝統的に関連した効果と似ているけれども、このプロセスではごくわずかなエリアの深さの変化レベルに集中します。

その上、それぞれの星のすべては、それぞれの全てにおいてできる限り多くのライトを捕らえるように異なる角度と深さで作られます。これは、安定した彫刻が何度も使われることを必要とします。これは時計製造での前例がないテクニックです。顕著な結果は、実際輝いている星の斬新な印象を与えて、それらの下のナイトブルーのプレートの背景に対しユニークで豪華に輝きます。

Baselworld 2016で初公開されたMemoris Anniversaireは、20本限定で製造されます。

予定価格:8,300,000円(税抜)



この部分、ちょっと理解出来にくかったのだが、ま、非常に高度なギョウシェ応用技によって宇宙が描かれている・・・ということのようだ。



クロノグラフパーツという機械美と、スケルトナイズによって見せるギョウシェ宇宙という工芸美の共存。
これこそ、時計のフェイスという空間で究極の融合を果たした稀有なタイムピースと言えるのではないだろうか。



とりあえず、今年のバーゼル新作中で一番実機を見たくなった時計であった。






















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by A-LS | 2016-05-13 07:07 | 時計いろいろ | Trackback | Comments(0)