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モリッツ・グロスマン新作・追加投稿


モリッツ・グロスマンのバーゼル新作について、前回のレポートでは書き切れなかったことや、ドイツ時計通の皆さんが気になっているであろうポイントなど、当日にスタッフに尋ねて知り得た点をとりまとめた。


①「アトゥム Pure M」はなぜオフィシャルHPなどの新作発表から外れていたのか?
「Pure M」は、製作がかなりギリギリで、バーゼルに間に合うかどうかわからなかったため、HPなどには間に合わなかったということで、特別にHPから外したりサプライズ的に隠していたわけではないそうだ。

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この「Pure M」についての追加情報。
これまではダイヤルを社外への外注としてきたグロスマンだが、このメッシュ・ダイヤルに関しては、初めて社内製作としたそうだ。8つのパーツからなる複雑な構造と、スティールを網目状に編むなど、通常の文字盤業者では対応できなかったからかもしれない。

「Pure M」のステンレスケースは針とインデックスにグリーン、DLCステンレスケースのものはホワイトでの彩色が施されているが、バーゼルで実機サンプルを見た工藤CEOは、SSケースのグリーン・インデックスがピンとこなかったため、改めてブルーの彩色でオーダーしてきたとのことだった。

では、ホワイト、ブルー、グリーン以外にどのようなカラー・ヴァリエーションがあるかについては、前述したように、「Pure M」自体がバーゼルにギリギリだったため、その全貌はいまだ把握されておらず、この3色以外の展開がどうなるかはまだ解からないそうだ。

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なお、アトゥムのミニッツレールはプリントではなく、窪みを彫り込み墨を流し、白い樹脂を充填した後にポリッシュ仕上げしたもの。針も同様の作りで、新しいランセット型のステンレス製自社針が採用されている。



②新作の「アトゥム・パワーリザーブ」が、「ベヌー・パワーリザーブ」と同一のキャリバーを使用したことで、これまで続いてきた”ワンモデル・ワンムーヴ”が崩れたこと。
さらに言うと、この2つのモデルは径(41mm)も厚(11.65mm)も同一なため、いってみれば文字盤変更モデルのようなもので、つまりは「アトゥム」と「ベヌー」というモデル・ライン自体の境界もあいまいになってしまったわけである。
工藤CEOは本当に正直な方で、言い訳など一切することなく、「おっしゃる通り」と、すべてを認めてしまわれた(笑)。

なので、以下は、わたしなりの仮説でしかないのだが、この件に関してはこのように予想している。
もともと限定モデルとして登場した「ベヌー」はその手間と完成度からそう長くは継続できないモデルであった。すでにオリジナルは完売でジャパンリミテッドが残るのみであり、ベヌー・トゥールビヨンも限定、となるといずれはパワリザーブのみになってしまう可能性が高いが、「ベヌーパワーリザーブ」はグロスマン製プッシャー付き手巻き機構が付くなど、どちらかと言えば機械的にはもともと「アトゥム」寄りなのである。
といったことを踏まえて、今年は貴金属ケース・モデルの新作がないということもあり、今のうちから「アトゥム」にパワーリザーブを加えておこうという判断がなされた。・・・どうだろうか。

また、今後「アトゥム」が主力ラインとなる予兆として、今年の新作のステンレスケースの大半が「アトゥム」ラインを名乗っているほか、「アトゥム」といえばバー・インデックスと思われていたデザインに、「アトゥム Pure M」に見られるようなアラビア数字を採用したことなど、デザイン上の制限を超越し、今度の展開の選択肢を広げていることなども指摘できるのではないかと思う。
(同様に、先に発表された「テフヌート・ジャパン・リミテッド」がローマ数字を採用していることなどからも、今後のグロスマンのモデルラインの展開の自由度は高まるような気がする)


③ステンレス・ケースの新作はすべて限定であるが、その限定数を足すだけでも、グロスマンの年間製作数を大幅に上回ってしまうこと。
グロスマンの年産本数は現在約200本とされているが、今回のSS限定の合計は優に200本を超えているので、限定数すべてをデリヴァリーし終えるには数年かかることをドイツ本社も予想しているが、もちろん増産計画もあり、今後の10年をかけて年産本数を5倍の1000本にする計画を実行中とのことである。


グロスマンは今後もステンレスケース・モデルを発表するのかどうか。
それは今のところわからない。
ただ、今年の2月にフッター社長を迎えて行われたブティック一周年記念行事の際にブティック・スタッフに今回のSSモデルのプレゼンがあり、スタッフ間でもその賛否は分かれたそうである。先のブログにも書いたが、今回の新作群への市場の評価が、グロスマンの方向性に大きく左右することになるのかもしれない。


⑤ステンレスケース・モデルのムーヴメントはエングレーブの仕上げが簡素化されているが、これはブランドの哲学と矛盾しないのか?
グロスマンのブランド哲学は『シンプルかつ機械的に完璧な時計の設計』にある。その意味で、ステンレス・スティールというシンプルなケース素材に合ったデザインの完璧さを表現したのが、今回の「Pure Steel」の簡素化なのであるとグラスヒュッテ本社は説明している。これは往年のグロスマンでもそうであった(ランゲにおける同様な例も先のブログに示した通りである)。実際、テンプ受けの彫りを省いて得られる時間短縮や経費節減はさほど大きなものではない(地板の仕上げ加工に関してはそのやりかたによる)。
だが、ここがまだ小回りのきくサイズ感のブランドの利点なのだが、もし購入希望者が、ケースはSSだが、ムーヴメント裏には貴金属モデル並みの仕上げやエングレーヴィングが欲しいと願った場合、グラスヒュッテ本社の裁量と見積もりによって、特別なオーダーを受けることは可能だというのだ!!

かつてまだ小さなブランドだったランゲ&ゾーネが、SSケースのランゲ1の製作を受けたり、36mm径のプール・ル・メリットを作ったり、ブルーダイヤルのダトグラフをワンオフ・モデルとしたような時期、多くの時計ブランドの歴史にはこのようなスペシャルな時期があり、やがて規模が大きくなるとこれらの手間のかかるオーダーはほとんど受け付けられなくなることが通例なので、そういう余地が生まれてきた今のグロスマンは、かえって面白い”ユーザー・フレンドリー”な存在になっている言えるのかもしれない。



⑥「シンプルかつ機械的に完璧な時計の設計」を謳うグロスマンとしては、複雑機構の時計の開発をどのように考えているのか?
確かに「トゥールビヨン」を発表してはいるが、現状ではクロノグラフ以上の複雑機構は予定にないというのが公式見解となっている。だが、今年のSSケースの発表のようなサプライズ的な新作もないとは言い切れないのではないだろうか。





というあたりが先のイベントでなされた質疑応答や、スタッフ説明からの追加情報であり、今回のSSモデルやムーヴの簡素化に対して抱かれる多くの疑問点に対するQ&A集になっているのではないかと思う。



新作のサンプルは4月中に日本ブティックに到着するとのことなので、次には実際のモデルを見たうえで、さらなるレポートをお届けしたい。
また「ノープレッシャー・フルケアー」で、みんな一緒に行く(笑)!?






















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Commented at 2016-04-04 04:35 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by a-ls at 2016-04-04 12:00 x
04-04 04:35付コメントさん はじめまして。
受け取り方は人それぞれですから、そう感じられても構わないと思います。物事が大きく変わるときには必ず”賛・否”がありますから。わたしはドイツ時計の特性や良さを広く伝えたいと手弁当でやっておりますし、その目的に沿っていれば、コメントさんとは逆にポジティヴに捉え、なるべく”讃”の部分を伝えるようにしています。
この価格帯になったことでグロスマンが選択肢に入ってくる方もいるでしょうし、そうした方々にとって、このことがドイツ機械式時計に踏み込むひとつのキッカケになるのなら、これはとても意味があると思いますので。
Commented by 茶処 at 2016-04-04 12:09 x
行く行く〜笑
その後、またピザを食べたいですね!
Commented by ほしし at 2016-04-04 12:17 x
詳細な情報をありがとうございます。
購入を検討している者として、本当に有意義です。
直接ブティックの方にも話して苦笑されたのですが、私はエングレービングやシャトン止めよりも、しっかりした作りやメンテのし易さに惹かれてグロスマンに興味をもっております。それなので、仕上げが良ければ今回のスチールモデルは「あり」です。
ベヌーのスチールケースが出なかったのが残念なのですが、ブログに書かれていますとおり、ワンモデルワンムーブメントではなくなってしまったので、逆に将来「SSアトゥムの文字盤違いとしてのSSベヌー」モデルが出るかも知れないと期待しています。まあ、現在の生産可能本数を考えると当分は望み薄かもしれませんが。
まずは来月か再来月、SSモデルのサンプルを拝見するのが楽しみです!
Commented at 2016-04-04 12:27 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by a-ls at 2016-04-04 12:45 x
茶処さん こんにちは。
あのピザ屋さんには、ひとりでたどり着ける自信がありませんので(笑)、こちらこそ、どうかご一緒してください。
入荷案内が来たら連絡とりあいましょう!!
Commented by a-ls at 2016-04-04 13:11 x
ほししさん ありがとうございます。
そう言っていただけると、ブログ書く励みになります。これ書くのにも結構な時間を使ってるのですが、反応によっては気持ちが折れそうになる時もありますので(笑)。
時計趣味の醍醐味のひとつは、あれこれ検討中の”悩ましさ”にもありますから、いろいろ迷って愉しまれてください!
 
Commented by a-ls at 2016-04-04 13:14 x
2016-04-04 12:27付コメントさま
貴重な情報ありがとうございます!
そうなのですね、そうきますか・・・。。。。。。
"悩ましさ”倍増です(笑)。
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by A-LS | 2016-04-02 17:18 | グラスヒュッテ・ブランド | Trackback | Comments(8)