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a-ls 時計(Mechanical Watch Users News) blog.

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Le Garde-Temps-Naissance d'une Montre



今年のSIHHでは、個人的な痛恨事がいくつかある。

平年と同じような時間配分で臨んだところ、今年新たに設置された「独立時計師ブース」をきちんと回ることが出来なかったこと。
そして、同じ理由で、グルーベル フォルセイのブースにも行けなかったことだ。
というのも、そのブース内には、すごく気になる時計が見られたハズだったからだ…。



「Le Garde-Temps-Naissance d'une Montre(時を計る、時計の誕生)」と題されたプロジェクト、それはグルーベル フォルセイの2人、ロベール・グルーベル、ステファン・フォルセイと、そして巨匠フィリップ・デュフォーの3人が9年前から進めていたもので、伝統的な手作業による時計製作のノウハウをまとめ、そして次世代へと継承していくための試みであり、その第一号機がSIHHのブースに展示されているはずだったからである。


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帰国後、ある方のご厚意によって、偶然にもこのプロジェクトの資料を得ることができたので、実機は見ていないけれど、なんとか記事にすることはできた次第。
本当にありがとうございました!!

では、まず資料からの引用で、このプロジェクトのアウトラインと経緯から説明しよう。


お話は2007年までさかのぼり・・・  (※以下資料よりの引用で再構成しました)


Le Garde-Temps-Naissance d\'une Montre_b0159560_22561346.jpg共に「Time AEon」財団のメンバーである、ロベール・グルーベル、ステファン・フォルセイ、フィリップ・デュフォーの3人は、憂慮すべき現状に気づきました。時計製造の世界において、産業化が進んで大いに自動化の助けを借りるようになったがために、古くからの伝統的な職人技とノウハウが失われようとしていたのです。
そこで彼らは、弟子を育成して行動することを決意しました。この弟子は、昔ながらの機械(直立ポール旋盤、時計旋盤、丸く削る機械など)を用いて手作業でタイムピースを制作することにより学んだ技術を実践し、続いて今度はその知識を次世代に受け継ぐことで、卓越した時計製造の技が失われないための役割を担うことになっていました。



彼ら3人は、パリのディドロ技術高等学校で時計製造の講師をつとめる、フランス人のミッシェル・ブーランジェに白羽の矢を立て、弟子とし、2009年に「Le Garde-Temps-Naissance d'une Montre 」のプロジェクトを発表します。



プロジェクトは、2012年1月のジュネーブでのSIHH(国際高級時計展)を機に公式にスタート。
教師から再び生徒の立場になったミッシェルは、毎月ラ・ショー=ド=フォンを訪れ、ロベール・グルーベル、ステファン・フォルセイ、フィリップ・デュフォーだけでなく、グルーベル・フォルセイで働く様々な専門家たちからのアドバイスを受けました。


スイスとラ・ボースにある自身のアトリエの間を行き来しながら、ミッシェル・ブーランジェは約6年間で卓越したタイムピースを完成させたのです。
それは、手巻き3針ムーブメントで作動し、19世紀の時計製造の伝統、とりわけジャック=フレデリック・ウリエやアブラハム=ルイ・ブレゲに始まる伝統の系譜に連なるトゥールビヨン機構を備えた、非常に端正なラウンド型の腕時計でした。


トゥールビヨン機構を際立たせるために、このタイムピースのデザインは、時計と分針のあるオフ・センターの文字盤を備えています。そしてたとえ目に見えなくても、各部品の仕上げには特別なこだわりが込められています。これこそがまさに、「Le Garde-Temps-Naissance d'une Montre 」を支える、手作業による卓越した職人技術の概念なのです。










伝統的な時計製造のノウハウを集め、保持し次世代へ受け渡していくという共同プロジェクトの周りに結束した、3人の象徴的な時計職人たち。
忘れ去られる危機に瀕しているこれらのノウハウを習得する役割を担う、ひとりの若い時計製造技術の教師。
古くからの時計製造の伝統を忠実に守って、手作業で製作されたタイムピース。
これらがプロジェクト「Le Garde-Temps-Naissance d'une Montre (時を計る、時計の誕生)」の主役であり、原動力なのです。


そして今年のSIHHと同時に公開された動画をどーぞ!(※ただし17分もありますので心してご覧あれ!!)





手作業のノウハウを集め、次世代へ受け渡してい行くという強い意志によって、さまざまな思いがけない展開と予期せぬ出来事を経て、ようやく今日「Le Garde-Temps-Naissance d'une Montre 」は、伝統が詰まった機能的なタイムピースという、非常に重要な段階までたどり着きました。
我々はこの最初のタイムピースを販売(2016年末納品予定)できることを誇りに思っています。11本シリーズのタイムピースには、時代と過ぎ行く時間に立ち向かうことに決めた、一途な時計職人たちの信念が込められています。その点において、このタイムピースは技術的であると同時に人間的な冒険の証なのです。またこの新作は、時計製造の伝手王が凝縮された歴史の一部でもあります。そして、今さら改めて示すまでもなく伝統の継承に注力していることで認められている、グルーベル・フォルセイとフィリップ・デュフォーのタイムピースに求める品質基準も完全に満たしています。


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さらにはスポンサーシップがこの冒険の究極の目標になります。これらのタイムピースの売り上げによって、このプロジェクトの継続、すなわち「ノウハウの継承」を確実に行うことが可能になるのです。

・・・・引用以上
Le Garde-Temps-Naissance d\'une Montre_b0159560_23154552.jpg


つまり、時計の地板や歯車などの部品パーツを、手作業で一から製作するという、21世紀の現在ではもはや消えてしまいそうな伝統的な手作業技術を伝授するため、若い技術者を育成しつつ時計を制作し、またその販売益によってこれを繰り返して(約5年で一作のペースを予定)、次世代へと綿々とその技術の伝承を意図していくという、実に崇高なプロジェクトなのである。


2016年後半より納品開始。
トゥールビヨン。
直径45mm・15.1mm厚・18000振動。

購入者は、この時計の価格 $471,000を負担することで、プロジェクトの意義を理解し、パトロンとしてこのプロジェクトをスポンサードする、すなわちスイス時計産業を支えることにもなるのである。



これからもシリーズ化されていく予定のため、
非常に興味深いプロジェクトとして今後も注目していきたい。












【補足】

またこのプロジェクトに似ているが、グルーベル フォルセイは今年、アトリエに属する職人たちの専門技術を活かしたダブルネームのタイムピース「Signature 1」の製作も発表するなど、後進の育成に余念がない。

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41.4mm径。大きなテンプを持つシンプルな三針時計。
テンプそばに刻印されたDidier J.G. Cretin が10年以上グルーベル フォルセイのアトリエでテンプの設計などを専門的に行なってきた時計師の名。
この時計は、ゴールドで33本、プラチナで33本、さらにステンレススティールで33本、事前注文でのみ入手可能。
SFr155,000 (税抜)なので、このブランドの歴史上で最もリーズナボー、グルーベル フォルセイがエントリープライスの作品を出したということでもSIHH会場でも話題となっていた作品だ(笑)!!






























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by A-LS | 2016-02-12 00:42 | 時計いろいろ