”和時計”に会う
しかも、初号機と今年のバーゼルワールドで発表されたリサイズ・ヴァージョンを、2本同時に!!
江戸時代の時刻は、日の出と日没を基本にしており、日の出を”明け六つ”、日没を”暮れ六つ”として、昼と夜の時間をそれぞれ6等分して、そのひとつを一刻(いっとき)としていたわけです。つまり日の長い夏になれば昼の一刻は長くなり、逆に冬の昼の一刻は短かくなければなりません。季節によって一刻の長さがぜんぜん違うわけです。
12時間なり24時間なりを均等に割ってこその”時計”という概念では、これを文字盤上に再現するのはほぼ不可能にも思えますが、和時計は時刻の駒(今で言うインデックス)のほうも自動的に動かすことでそれを克服してしまうという、とてつもない時計なのです。
興味のある方は、そのプロジェクトに密着した下のNHKの番組をどうぞ。
実は、わたくしは時計よりも先に、この田中久重に魅了された経緯があります。小学生の時に、NHKの子供番組でこの久重の少年時代ををドラマ化した「からくり儀衛門」という番組がありまして、本当に夢中になってみておりました。
その中で、今でも強烈に記憶しているエピソードが、時計絡みのものでした。
早朝のまだ暗いうちに起き、”明け六つ”の鐘を撞かなければならない寺の小僧さんの苦労を知った儀右衛門少年が、自動鐘つきのからくりを思い付き、寺に内緒で勝手に設置するエピソードです。それは、設置したタイマー替わりの荒縄がほどけきると、荒縄の先に括り付けられた切り株がハンマーとなって鐘を撞く仕組みだったのですが、その荒縄の長さを計測したのが夏、しかし設置は冬だったため、日の出前にからくりが作動してしまい、和尚にこっぴどく怒られてしまいます。
しかしこの失敗から儀右衛門は、「定時法」と「不定時法」の概念に気付いたのでした…というもの。
思えば、このドラマに感じたわくわくが、今の時計趣味のルーツになったのかもしれません…。ああ、懐かしい。
や、話がすっかり横道にそれてしまいましたが・・・
そんな複雑な和時計の機構(自動割駒式和時計=じどうわりごましきわどけい)を、腕時計サイズにまで小型化・搭載したのが菊野さんなわけです。
でも、「夜が明けたら6時」、「日が落ちたら6時」という、とってもわかりやすく、なおかつ自然と調和した日本人の時制、それを機械式時計という歯車の規則の中に再現した菊野さんの感性と技術、これは間違いなくそのスピリッツ&発想からして日本オリジナルですから、広く世界に発信して、この感性を世界中の時計ファンに知ってもらいたいと、わたしは心から願うのです。
もちろん現在の時分針も備えていますし、緯度と経度を伝えれば(白夜の関係で北限はあるそうですが)、海外でもその地の不定時法を味わうことができるそうです!!
【菊野さんのHP】→ http://www.masahirokikuno.jp/
また、この和時計は現在、セイコーミュージアムで一般公開中ですので、ぜひお出かけください!
http://www.seiko.co.jp/news/holdings/2015/201505291598.html
ちなみに、この集会は不定期開催のイベントで、日本在住の外国人時計マニアと日本の時計愛好家が、英語と日本語のちゃんぽんで時計の話ばっかりするという変だけどとっても楽しいイベント。
今宵の時計たちがこちらでした。。。
ああ、楽しかったぁ~