人気ブログランキング | 話題のタグを見る

a-ls 時計(Mechanical Watch Users News) blog.

alszanmai.exblog.jp

世界一の複雑時計

今年の9月17日、世界で一番複雑な時計が発表されます!


これまでの時計史において、最も複雑な時計といえばパテック・フィリップのキャリバー89でした。
しかし、世界3大ブランドのひとつバシュロン・コンスタンタンは、今年むかえる260周年記念式典の”目玉”として、現在制作中の懐中時計を披露すること、そしてその懐中時計は、過去に製作されたどの時計よりも複雑な機構を持つことを明らかにしました。


以下、HPより引用します。

「1755年の創業以来、一度も途切れることなく続いてきたマニュファクチュールであるヴァシュロン・コンスタンタンは、2015年9月17日、創業260周年を迎えます。
この記念すべき特別な機会に、メゾンは前代未聞のタイムピースを発表します。 高級時計製造の世界で前例のない技術進歩を体現するこの時計は、発注者であるコレクターの夢と、難題の実現に挑むメゾンの意欲から生まれた作品です。

この懐中時計の製作には、 8年に及ぶ開発期間を要しました。8年間このプロジェクトに特化したメゾンの3人の時計職人たちが、スペシャルオーダーを担当するチーム「アトリエ・キャビノティエ」のサポートを受けて、全面的に設計・製作を手がけたこのグランド・コンプリケーション時計は、卓越性の探究によって培われてきた260年にわたるノウハウを示すものです。

昔ながらの時計製造の原則と、21世紀の革新的な技術を同時に用いて生み出された、世界で最も複雑なこの時計は、ジュネーブ・シール取得のための厳しい条件を満たす計時機能とコンプリケーションの驚くべき組合せになっています。

この時計には、一から計算・設計を行わなければならなかった全く新しいコンプリケーションが搭載されています。さらには他のすべてのコンプリケーションに関しても、技術あるいはデザイン面での改良や変更が加えられており、数多くの特許申請の対象となりました。
この世界一複雑な時計の製作には、不断の粘り強さのみならず、かつて到達されたことがないほど高レベルな数学と職人技を駆使することが求められました。

この卓越した時計に搭載されている、数々の斬新なコンプリケーションに関する詳細は、今後少しずつ明らかにされます。今年の260日目で、なおかつメゾンの創業260周年の日に当たる2015年9月17日、ヴァシュロン・コンスタンタンは、世界に一つしかないこのタイムピースの全容を明らかにします。」


世界一の複雑時計_b0159560_11185111.jpg

久々にエキサイトする内容ですが、ちょっと冷静になりましょう。
ひと口に世界一複雑な機能といっても、なにをして世界一と決めるのかですが、これまでは複雑機能の数でした。現時点世界一といわれるキャリバー89は33の複雑機能を有していました。
かつてパテックの175周年時計5175についた書いたブログで、キャリバー89の複雑機能にも触れましたが、その33機構を羅列しますと、
1)恒星時の時間、2)恒星時の分、3)恒星時の秒、4)第2タイムゾーンの時刻、5)日の入り時刻(ジュネーヴ)、6)日)の出時刻(ジュネーブ)、7)均時差、8)トゥールビヨン、9)永久カレンダー、10)日付(レトログラード表示)、11)西暦年(3ディスク)表示、12)曜日表示、13)月表示、14)閏年表示、15)世紀ごとの閏年修正、16)太陽針(季節、分点、至点、黄道12宮)、17)天空星座図(ジュネーブ)、18)月齢ムーンフェイズ、19)イースターの日付、20)クロノグラフ、21)スプリットセコンド・クロノグラフ、22)30分計、23)12時間計、24)グランド・ソヌリ・チャイム、25)プティット・ソヌリ・チャイム、26)ミニッツ・リピーター、27)アラーム、28)ムーブメント・パワーリザーブ、29)チャイム・パワーリザーブ、30)チャイム停止装置、31)リュウズ位置インディケーター、32)ツイン・バレル、33)4ウェイ・セッテイング・システム。

・・・なのですが、おそらくこのヴァシュロンの懐中時計(社内的なプロジェクト名は”グランド・ルーブル”もしくは”マグナム・オーパス”と呼ばれているそうですが、有名なアレックス・ゴビ氏は非公式ではありますが、”チボリ”と名付けています)、この時計が、世界一を謳うということは、まず間違いなく34以上の複雑機能が搭載されていると思われます。

どのような新機能が含まれるのかはおいおい明らかにされていくのらしいのですが、ブランドはいくつかのヒントを提示しました。

新機能その①:ビッグベンでお馴染みのウエストミンスター・カリオンのゴングを搭載。
グランドソヌリとプチソヌリの切り替え(ゴングの打音)に関する画期的な機構がある。
また、あらかじめ設定しておくことで、就寝中など音を出したくない時間帯に自動的にサイレンスモードになる機構がある。

新機構その②:選択・切り換え可能なデュアル・カレンダー機能を備えている。
つまり、12か月・52週・7曜という一般的なグレゴリオ暦と、ISO 8601ビジネスカレンダーシステムとの切り替え、あるいは瞬時の読み換え(?)が可能。

ここで先のヴァシュロンのHPの文章を思い起こしてほしいのです。
今年の260日目で、なおかつメゾンの創業260周年の日に当たる2015年9月17日、ヴァシュロン・コンスタンタンは、世界に一つしかないこのタイムピースの全容を明らかにします”という文章、これは、ISO8601にはその年の何日目かを表示する項目があることを、暗にほのめかしていると思われます!!
ちなみに、9月17日という日付は、1755年にジャン‐マルク・ヴァシュロンが公式に最初の弟子(時計師見習工)を採用し、時計工房として最初の段階を刻んだ日でもあります。



さて、もうひとつ驚くべきことは、この時計は一般に販売するために開発されたものではなく、「アトリエ・キャビノチェ」 と呼ばれる顧客のオーダーメイドに応えるセクションが窓口となって作られているということです。

ヴァシュロンのHPにはこういうページもありますので、引用します。

「1755年の設立以来、ヴァシュロン・コンスタンタンが特に力を注いできたことは、モデルの外観の決定や、機能や部品の選択に際限ない時間を費やし、熟練時計師によるオーダーメイドの腕時計を製作することです。非常に複雑な時の表現や詩的表現、ギヨシェ装飾やエナメル装飾を施した文字盤、ローマ数字やアラビア数字、センターセコンド針やパーペチュアルカレンダーなど、あらゆることを実現し、オーナー様の望みを反映させた個性を腕時計に与えるために労を惜しみません。

ヴァシュロン・コンスタンタンの腕時計のコレクターは、このことを熟知しています。そのため、1860年代には、皇帝アレクサンドル2世と皇后が、息子のウラジーミル・アレクサンドロヴィチ大公のために豪奢なタイムピースを注文しました。20世紀の初頭には、パティアラのマハラジャ、ブーピンダル・シン氏が腕時計のスペシャルオーダーの著名なお得意様の1人でした。有名なニューヨークの銀行家ヘンリー・グレーブス・ジュニアと、彼の友人であり有名な20世紀初期の自動車製造者ジェームズ・ウォード・パッカードも、ヴァシュロン・コンスタンタンが製作したオリジナルのタイムピースの素晴らしい オーナーでした。

現在、ヴァシュロン・コンスタンタンの「アトリエ・キャビノチェ・スペシャル オーダー」サービスが、アイデアや独創性の自由なやり取りから築かれたこの 伝統を引き継いでいます。

「アトリエ・キャビノチェ・スペシャルオーダー」部門の使命はジュネーブの優れた時計職人キャビノチェたちの卓越したノウハウを永続させることです。このアトリエは私どものお客様に、あらゆるご希望を叶えた、唯一無二のタイムピースをオーダーメイドで製作するという他にはない特別なサービスをご提供いたします。

このスペシャルオーダーの多くには秘密と内密性が取り巻いています。しばしば常軌を逸した夢を体現したり、とにかく激しい欲望を表現しています。視覚的に選ぶというよりもオーナー様が希望を話すことで製作されます。
キャビノチェにはカタログやコレクションというものがありません。あるのは注意を払って聞く耳です。注文者の秘密で私的な物語から全てが始まりました。ある者は歴史に夢中でグランフー・エナメルで絵画の復刻を希望しました。またある者は恋する詩的な人物で年に一度、愛する人の誕生日にだけ鳴る大切なメロディーを欲しがりました。最後に、複雑さを好む者は今までにない時計を夢見ていました。
易しいものから難しいものまで全ての注文は、プロジェクトがメゾン・ヴァシュロン・コンスタンタンの価値観と伝統に完全に調和し、未来のオーナー様の夢を満たし、かなえることを保証するために特別に任命された倫理委員会によって丹念に検討されました。」


ということです。
実はわたしもこのシステムで時計を1本お願いしたことがあるのですが、その顛末はまた別の稿にすることにして、さてこの”チボリ”、下世話な話、お幾らくらいなんでしょう(笑)。
まず『このプロジェクトに特化したメゾンの3人の時計職人たちが、8年間がかり』という表現から、世界最高級の技術を持った時計師が3人も、8年間フルタイム・ジョブしていることだけでも、人件費的に7~8億円はかかっていそうななわけで、うーん、”チボリ”というニックネームから、発注主はコペンハーゲンの大金持ちではないかと踏んでいるのですが、おそらく昨年オークションで話題になったパテックの「スーパーコンプリケーション」の落札価格並みのお値段になるのではないかと邪推しております。(笑)


というわけで、この件に関しましては、続報がありましたら、随時お知らせするようにします。







(関連の参考記事)
http://alszanmai.exblog.jp/23018101/
http://alszanmai.exblog.jp/23718471/
http://alszanmai.exblog.jp/23723984/












als_uhruhrをフォローしましょう



by A-LS | 2015-06-17 12:59 | ヴァシュロンコンスタンタン