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Hermès Watchの”和・洋”合体


よほど日本文化を評価してくれているのでしょう。
昨年の”手毬”に続いて、今年のバーゼルでも、ジャパン・オマージュをテーマとした時計を出してきたエルメス。

今年のお題は、同ブランドの薄型時計「スリム ドゥ エルメス」の文字盤に採用された” Koma-kurabe ”です。

漢字を充てると、”駒くらべ”もしくは”駒競べ”。

ここで言う”駒”は馬の意味で、”駒競べ”とは数頭の馬が一定距離を走って勝敗を競う日本古来から続く乗馬競技のこと。奈良・平安の時代には宮中儀式の一つだったのだそうです。別名「きそいうま」、「きおいうま」、「競馬(けいば)」とも呼ばれます
もはや日本人でも知ってる人は少ない行事と思われますが、特に有名なのは、陰暦5月5日(現在は6月5日)京都の上賀茂神社の境内で行われる千年以上の歴史を持つ神事「賀茂の競べ馬」で、「かもけいば」とも呼ばれます。詳しくはコチラで。

まずはその作品を。
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特に押さえるべき点は、これはエナメル文字盤ではなく磁器製の文字盤で、石川県出身の九谷焼作家、福島武山氏が「駒くらべ」をテーマに絵付けした赤絵だということです。
非常に興味深いことに、エルメスは福島氏に12枚の図柄をデザインすることと、もうひとつ、絵付けのベースにフランスの国立窯であるセーブルの白磁を使用することを依頼しました。つまりこの作品では、日本(九谷焼)と仏蘭西(セーブル)と瑞西(時計)という、3国の伝統工芸が合体して成立しているわけです。
こうしたコラボレーションは時計業界初の快挙だそうです。


Hermès Watchの”和・洋”合体_b0159560_06112371.jpg

福島武山氏についてはコチラを参照。
絵付け制作風景。

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さらに今年のエルメスは、この日本の赤絵のテイストだけを活かしたセーブル磁器文字盤をもう1シリーズ製作しています。

それがこちらの、「Slim d’Hermès La femme aux semelles de vent」。
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直訳すると”風の靴を持つ女”、かつてエルメスのスカーフのモチーフとされた図柄で、これも12本の限定だそうです。


[Slim d’Hermès テクニカルデータ】
自動巻きムーブメント:Ultra-thin Hermès Manufacture movement H1950(スイス製)搭載
ムーブ径:30 mm (13 ¼’’’)
ムーブ厚 : 2.6 mm
パワーリザーブ:42時間。21’600振動/時/3 Hz/29石

ケース径:39.5 mm
ケース素材: 750 white gold (≈32.90 g)
風防&ケース裏:サファイアクリスタルガラス
防水:3気圧
文字盤:フランス国立窯セーブルからの白磁に、日本の伝統的技法で「赤絵」と呼ばれる、赤のみで陰影をつけた細密画(ミニアチュール)で絵付け(輪郭線には赤以外の金などを使う場合もある)
バックル:750 white gold (≈5.37 g)
限定数:各12本を1シリーズ

このブランドが馬具から興ったことは、エルメスのロゴからも有名です。
それゆえに”馬”のモチーフはブランドにとっても特別な意味を持つのでしょうね。

別のシリーズですが、アルソー( Arceau)のヴァリエーションとして、こんなエナメル画の”馬”モチーフ作品を出していたりもします。
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最近のエルメスはどうやら時計も重視し始めているようで、文字盤デザインだけでなく、機械を美しく見せる、こんな時計を出していたりして、今後もちょっと面白い存在になるかもしれません。

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by A-LS | 2015-04-28 06:52 | 時計いろいろ