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SIHH2013~ランゲ新作【総括②】

なかなか書けなかったSIHH2013~ランゲ新作【総括:後半】・・・
一カ月も放置していた形になってはしまいましたが、その間ずっと悩んではいたのです。

 もともとは、今年の新作発表によって読み取とれるランゲの未来的な指針や方向性を語るために、復興ランゲ史上初といえる幾つかの大きなエポックの中から、発表しても差し支えのなさそうな3つを(笑)、さっくりとまとめるつもりでしたが、いざ書き始めると、「書いていいこと、書くべきこと、????なこと」など、その辺りが混乱をはじめて、書き方を間違えると、せっかく好評な今年の新作の真価を誤解されかねない部分もあり、なかなかまとめられずにおりました。
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そこで、当初に考えていたエポックの要点を大幅に変更しつつ、なんとかかんとか着地させてみました(汗)。

だいぶ時間が空いてしまったので、まずは前半のおさらいから・・・。

エポックその①
待たれていたリピーターが出た。
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しかしそれは「旧ランゲ時代の懐中時計のアプローチをそのまま“腕化リケース”した位置づけから生まれた」ものであった。この大作についてはさらに別ブログで書きます。


エポックその②
アウトサイズデイトの呪縛を絶ち、指針によるデイト表示を認めた。
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アウトサイズデイトは復興ランゲの象徴的な意匠であり、ランゲ&ゾーネのアイコンであったと同時に、デザインの自由度や設計上の選択肢の幅をかなり拘束してきたことも事実でしたが、「グランド・コンプリケーション」というモンスターと「1815ラトラパント」という名機の登場によって、 “アウトサイズデイト縛り”をついに解き放ちました。

というのが、前半のまとめでした。そして・・・

エポックその③
それは・・・ランゲ史上初めてグランメゾンとしての最低条件モデルが揃った

「なんじゃそりゃ!?」と思われるかもしれません。

もともとはもっと違う解りやすい切り口だったのですが、試行錯誤の中で妥協的表現を探してきたものなので、まぁ勘弁してください。
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 たとえば、ひとつのブランドをグランメゾンと呼ぶ場合、まずブランドの顔となる「エントリーモデル」があることを最低条件として、それ以外に、どんなレベルのユーザーニーズにも応えることのできるいくつかの典型的な複雑時計をカタログに常備していることが、その条件のひとつであると思っています。
それらとは、「①ワールド(デュアル)タイム」、「②クロノグラフ」、「③年次カレンダー」、「④永久カレンダー」、「⑤永久カレンダー付のクロノグラフ/(永久カレンダー付きのスプリットクロノ含む)」です。
 例えばキング・オブ・グランメゾンとも言えるパテック・フィリップは、過去数十年間この5つのモデルを途切れさせたことは基本的にありませんし、後継機の発表と前任機のディスコンはほぼ同時期に行われます。もちろんこれ以外にも、スポーツモデルやレディースの充実など別の条件もあるでしょうが、この5つのカテゴリーをカタログに保持し続けることが、機械式時計ブランドの王道のひとつにあたる・・・みたいな意味でご理解ください。

さて、時間を2009年秋に巻き戻し、前CEOファビアン・クローネ氏が電撃的に退社した当時のランゲのカタログをみてみましょう。

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もっともプッシュされているのはツァイトヴェルク(デジタル表示)。
そしてカバレット・トゥールビヨン(ハック機構付き5日巻トゥールビヨン)、
ランゲ31(1ヶ月巻ロングリザーブ)など、スイス時計とそのマーケティングにあえて抗うかのような、非常に特殊かつ(ある意味では)面白い機構を持つ時計でした。

前述した複雑時計の基本ラインナップに関して言えば、
ランゲ1ファミリーからのタイムゾーン(ワールドタイム)以外では、
ランゲマティック・パーペチュアル(永久カレンダー)、
ダトグラフパーペチュアル(カレンダー付きクロノ)など、
発表からかなりの年数を経たキャリア組が孤軍奮闘する一方、唯一のクロノグラフが存在した1815シリーズは全機種ディスコン、ランゲマティック系もほぼ全廃という、そのカタログの内容は、グランメゾンを名乗るには大変いびつな状況でした。

ともかく、複雑時計で一番の“売れ筋”と言える、シンプルなクロノグラフと年次カレンダーがカタログにないというのは、マーケティング上からみても非常に特異なケースと言わざるを得ません。


 ファビアンの後を引き継いだのは、ジャガールクルトの若き総帥ジェローム・ランベール氏でしたが、ファビアン退任からわずか半年後に開かれた2010年のSIHHで、ジェロームがまず行ったことは、「1815クロノグラフ」の復活と「サクソニア年次カレンダー」の緊急投入でした。その性急ぶりからも、ジェロームの考えたランゲの理想的なあり方とファビアンのそれとの違いが窺えます。
そしてさらに2年の時を経た今年、「1815パーペチュアル・カレンダー・ラトラパント」の発表によって、
“ついに!”ランゲのカタログ内にもすべての基本的ラインナップが完成したわけです。

たとえば、前述のパテックとラインナップごとに比較するならば、
カテゴリー①  ワールドタイム=タイムゾーン
カテゴリー②  5170 = 1815クロノグラフ
カテゴリー③  5396他 = サクソニア・アンニュアルカレンダー
カテゴリー④  5496、5140他 = ランゲマティック・パーペチュアル、ランゲ1トゥールビヨン・パーペチュアル
カテゴリー⑤  5270 = ダトグラフパーペチュアル 
〃     5204=1815ラトラパント
番外       5959、5950他 =ダブルスプリット

カテゴリー④がちと微妙で(笑)、まだ改善の余地もあるかもしれませんが、とりあえずすべてのカテゴリーにおいて、充分にパテックの比較検討の対象になりうる競合機種が揃っています。
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ファビアン政権時代、スイス時計に対抗するために、あえてスイスの規格にはない“面白機構時計”を発表し続けてきたランゲが、今年は、スイス時計に対抗するために、ついに“古典に回帰した教科書的に美しい時計”を発表したわけです。それが1815ラトラパントです。

もちろん1815ラトラパントは本当に綺麗な作品ですが、あのランゲが、アウトサイズデイトへのこだわりを捨て、その結果として得られたデザインとムーブ設計上の自由度を最大限に活かし、渾身の本気を注入して“スイス・マーケティングのハイエンドモデル”である永久カレンダー・スプリット・クロノ(=5004タイプ)を作ったわけですから、それはもう、傑作が生まれて当然で、この作品の評価も良いのは当たり前なのです。
逆に言えば、もし今もファビアンがランゲのCEOであり続けたら、スイス時計にはない特徴を備えたままスイス時計と対峙するという彼のビジネス・スタイルが貫かれていたら、1815ラトラパントは100パーセントあり得なかった作品でもあるわけです・・・。
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ファビアン以後4年を掛け、ついに揃ったこの王道ラインナップの獲得と引き換えに、“面白機構時計”の発表が途切れた今年、このことがランゲの将来に何をもたらすのか・・・。期待できる点と気になる点が個人的にはそれぞれあるものの・・・この稿ではここまでとしておきましょう。




 
※いつかランゲ・ブティックのスペースでもお借りして、こうした微妙な部分を話し合うような“座談会”みたいなことを企画してみたかったりもするのですが、その際には参加してくれる方はおられますでしょうか?(笑)



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                                       お爺さま、また来年もよろしくです!












・・・なんかブティックさんに相談したら、意外とあっさり前向きなお返事が・・・。座談会、できるかも(笑)。




まだ五分五分なので、開かれなかったらごめんなさいなのですがOrz.....
3月上旬の週末とか、お時間があって、こういうお話にご興味がある方は、
メッセージを残してくだされば、万一、詳細がきまった際に、ご連絡しましょう。。。。

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Commented by KIH at 2013-02-27 16:39 x
AL-Sさん。微妙過ぎる・・・。しかし、無視して通り過ぎるわけにはいきませんね。わかります・・・。座談会。ぜひ。
Commented by かのじ at 2013-02-27 18:00 x
存在に必然性あるコレクションを継続してほしいです。座談会、素晴らしい試みですね。ランゲ開発陣にとって参考になるとなお良いですね。
Commented by ラン訪 at 2013-02-27 19:48 x
これで一通りのラインは揃いましたね。
来年は、また面白機構時計に戻るのか王道を突き進むのか楽しみです。
ただ、最近は限定品が多すぎる気がします。
ブリュムライン時代は毎年は限定品を出してなかった気するのですが・・・
Commented by MIYABI at 2013-02-28 09:53 x
今年の新作はブリュムライン時代の雰囲気が感じ取れます。
古典をやりながら新機構を開発して行くランゲ本来の良さが出ていると思います。嫌味にならない、やり過ぎない美しさというか・・・そんな魅力があります。
限定品もですがハイエンド・モデルの発表も毎年ではいくら素晴らしいものを出しても感動というか楽しさの余韻が薄れて来ます。
座談会良いですね。
Commented by らんげまにあ at 2013-03-02 18:34 x
「ジェローム氏の予言」に引き続き、早速の投稿をありがとうございます。
急かせてしまい、失礼致しました。

エポック3、さすがの着眼点ですね。座談会にて、更に詳しくお聞きしたいです。
Commented by a-ls at 2013-03-03 13:53
かのじ さん、 ラン訪 さん、 MIYABI さん、らんげまにあ さん
座談会の実現にこぎつけるまで、ちょっと時間がかかり、リプライが遅くなって申し訳ございませんでした。3月3日付のブログに詳細を発表しましたので、ご覧くださいませ。 
KIHさんは強制参加ですよ(笑)。
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by a-ls | 2013-02-27 15:33 | ランゲ&ゾーネ | Trackback | Comments(6)