ランゲ・コノスール・アカデミー・II
そのワークショップ編です。
ランゲ・オーナーズクラブ・メンバーの多くはグラスヒュッテでのランゲ・アカデミーを体験していますので、その際に支給された、胸に自分の名前が刺しゅうされた自前のウォッチメーカー・コート(白衣)を持参しています。コレはちょっとした自慢(笑)。
体験者4人+ヒコ・みづの時計学校の学生さん(この場では頼もしい教官!!)、合わせて5人でひとつのチームとなり、テーマ別にセッティングされたデスクをローテーションしながら、ワークショップを体験していきます。
わたしたちのグループに割り当てられたまず最初のミッションは、下の写真のセットを用いるものでした。
主ゼンマイを写真右にあ注射器のような器具を使って巻き上げてから、それを香箱に収めるという、聞いただけでは想像を絶するもの。しかも使用するのは、本物のランゲ1の主ゼンマイと香箱です。
いやがうえにも緊張が高まりますが・・・
でも、学生さんに言わせると、「これは簡単」とのこと・・・。う、う、先が思いやられます。
まず、器具の頭についてる小さなハンドルを外し、そこにゼンマイの小さな穴を噛ませます。
その後、小さなハンドルを元に戻すのですが、その際に、器具の小さな溝にゼンマイを通します。
えーと、実作業中はそれどころではなかったので、写真撮影できてません・・・・
これは作業前に行われたヒコ・みづの講師さんの模範演技から、ビデオ画面に映ってるあんな感じ。
そしてハンドルを使ってゼンマイを巻き上げたら、再度注意深くハンドルを外し、ゼンマイの残った頭部を下に向けて香箱に差し込み、器具のお尻の注射器のような部分を押すと、あら不思議、ゼンマイがぴったりと香箱に収まります!
ゼンマイ in 香箱のビフォー(左)・アフター(右)です。
次はいちばん楽しみだった、ネジの青焼き。
これは消防法の問題や天井高の問題から、ホテルなどを会場とする場合ではほとんど不可能なカリキュラムなのです。ヒコ・みづのさんに感謝、ラッキーです。
ま、でも、本当は針を焼きたかったんだけど・・・ランゲの純正針だと長短あわせると30万くらいするらしいので、今回はネジで代用。しかもこれは本当に使用されるネジよりも少し大き目なものだそうです。その理由は体験するとすぐにわかります。この大きさでもピンセットでつまむのは一苦労なのです!
専用の台座の中央にピンセットでつまんだネジを置き、着火したアルコールランプで熱します。
ベストとされるブルースティールの適温は300度。余熱のことも考え、290度くらいでネジをピンセットでつまみあげます。その際に、慌ててネジを飛ばしてしまう事故も多発(笑)。
熱によってみるみる色が変わっていくのですが、写真の上の方に見えるチャート表のようなものが、熱によるスティールの変化の図で、理想の青(コーンフラワーブルーというのだそうです)の直前の暗青色までじっと我慢。ちなみに、熱が足りないと紫っぽくなり、熱しすぎるとグレー、極限まで熱すると(770度以上)オレンジになるそうです。下は我が仕事です!
この作業では、みなさん自画自賛しておられました。
つづいてアンクルの爪石(ルビー)の着脱・・・だったのですが、これはパーツが細かすぎて写真どころではありませんでした・・・。抜き取るまでは良かったのですが、再びはめ込む作業中にルビー3個を弾いて紛失。人工ルビーとは言え宝石ですから笑えません・・・・。
この作業の詳細に関しましては、1年前に書いたものですが、過去のアーカイヴをご参照ください・・・・
さらに細かい作業が続きます。
テンプからチラネジを外し、ワッシャーを噛ませてから再びネジこむという、これは過去にドレスデンで体験して惨敗した作業ですが、爪石よりはマシに思えたのと、2度目ということもあってなんとか成功。
これも画像イマイチなので、過去ブログから写真リンクを貼りつけておきます。
(2012年7月25日付ランゲアカデミーの記事より。「チラネジの頭をネジ切った瞬間にも見えます」・笑)
そして最後にブラックポリッシュ。
トゥールビヨンのキャリッジやブリッジに使われる仕上げ方法で、通常、ひとつの部品に5日以上をかけてようやく完成する作業なのですが、ここではランゲが開発した特殊なポリッシュパウダー(配合成分はジョアンナ校長ですら教えてもらえていないという社外秘の物質)を使って、ランゲ時計に使われる実際のキャリッジを磨く、そのさわりを体験。
要は、部品の面と角を金属のヘアラインが無くなるくらいの鏡面に仕上げることで、部品の見た目が、反射面と影の面とに分かれ、黒か鏡面の色しか反射しないことからブラック・ポリッシュと言われる・・・というような感じをお勉強した気がしますが、この頃になりますと、楽しいのとか集中力を求められるのとか疲れてきたのとか、いろいろなテンションが交錯して、記憶があいまいなのでご勘弁を・・・。
そして約4時間のセミナーの後、学生時代を思い出すようなスクールバスに乗って移動します。
休日なのに無理に開けていただいた表参道のレストランをすっかりランゲ色に染めてのディナー。
初めての方も、常連の方も、そしてヒコみづのとランゲ・スタッフも、みなとても打ち解けて、本当に本当に楽しく素晴らしい1日を締めくくりました。
この3年間、ランゲ・オーナーズクラブを全国に広げようと頑張って参りましたが、やはりドイツに行くことなどスケジュール的にもハードルの高い部分があったことは否めません。でも、大成功を実感した本日のコノスール・アカデミーのような試みが、日本国内で定期的に開催できれば、もっともっと気軽にメンバーに参加してもらえるのではないかと確信しました。
今回のイベントの成功にご尽力いただいた関係各位様に、深く感謝申し上げます!!