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a-ls 時計(Mechanical Watch Users News) blog.

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ランゲ探偵局事件簿 “謎のDarth”・その第二回

ランゲ探偵局事件簿 “謎のDarth”・その第二回_b0159560_183361.jpg


※前回同様、左記図版と記事内容とに深い関係はございませんので、ご了承ください
 

前回のブログ「ランゲ探偵局事件簿 “謎のDarth”・その第一回」から続いています。

最初の“謎解き”からしばらくして、依頼者から次のようなメールと写真を頂戴しました。

  

ご回答ありがとうございます。
時計については、(販売業者と)これまで何度もメールでやり取りしています。
シリアルNo.が110202で興奮したのですが(?)、
いただいたコメントにより冷静になりました。
ムーブメントNo.は不明で、初期ではないのでしょう。
仮説2が確からしいのではないかなと思っています。
業者から来た写真を添付しましたので、ご覧ください。


「ん? …何!?  オーマイガ~! 
ケースナンバーが、110202だってぇぇぇぇ~!!」 


ランゲ探偵局事件簿 “謎のDarth”・その第二回_b0159560_1233451.jpg


添えられた写真で確認しても、間違いありません。 確かにケースナンバーは110202です。
これが何を意味しているかと言いますと・・・、
先のブログで述べた、わたしの仮説1および仮説2が、完全に崩壊してしまったのです。

つまり前回の両仮説とも、想定していたのはDarthが発表された当時、つまり1998年±2年以内の出来事だったのですが、このケースナンバー110202を受けるには、1994~95年の製作でなければなければならない理由が存在するのです。

前回も書きましたが、復興したランゲのシリアルナンバー(ケース番号)は、110,001から律儀にスタートします。1994年に発表された復興ランゲ初のモデルは、Lange1、Saxonia、Arkade、Pour le Mériteの4モデルでしたが、さらに律儀なことに、ケース番号の下3桁とムーブメント番号を合致させようと試みたため、初年度の製品に関してはかなり計画的に番号が振られています。
もちろん、いくつかの例外はあるでしょうけれど、
基本的にLange 1には110,001~110,250までの計250本が振りあててられ、
続く110,251番がウォルター・ランゲ翁所有のPour le Mérite(YGケース・限定番号1番!)であることは有名ですが、そこから200本、110,450までがPour le Mériteに振られます。
そして110,451以降をSaxonia、Arkadeで分け合いますが、こうした経緯から、110,XXX台のケース番号を持つ時計は、1994~95年ヴィンテージでなければならないのです。

過去ブログには画像もありますので、(ランゲ 1)(サクソニア)、ケース番号を確認してください。

さらにLange 1に絞って見ていきますと、復興年の94年に発表されたLange1は、すべてがソリッドケースバック仕様で、以下の3種類だったとされています。
・YG (solid caseback)ケース/ シャンパン・ダイヤル・型番:101.001
・YG (solid caseback)ケース/シルバー・ダイヤル・型番:101.002
・PT (solid caseback)ケース/ ロディウム・ダイヤル・型番:101.005
※これは推測の域を出ませんが、この250本の内訳は、YGが100本ずつで200番までを使い、残るPTが50本。結果、合計が250本になったのではないかな、と…。
※ちなみに94年の復興ランゲ初代4モデルのうち、シースルーバックが採用されたのはPour le Mériteのみで、それ以外の3モデルはすべてソリッドバックで発表されました。

依頼者が発見した米国の“Darth"のシリアルが110202であったということは、
ブラック・ダイヤルのLange 1である“Darth"が、すでに1994~5年のランゲ復興当初から用意されていたというあり得ない事態を意味します。もしもそれが事実であれば、ランゲ1の歴史は大きく書きかえられることになるという、つまりは、ランゲ1愛好家にとって驚天動地の大事件勃発なのです!!!

以下は、この写真を受けて依頼者に速攻で送ったメールです。   


ご返事ならびに、お写真ありがとうございました。
とり急ぎ、“Darth”についてですが、まさか11万0千番台だとは思いませんでした!

ケース・シリアルが110XXXとなりますと話は特殊になります!!
ウォルター・ランゲ翁が所持する、あの初代PLMの限定番号No.1のケース番号が、「110251」で、
以降、限定番号とケース番号は一致して進んでいます。

今回の110202はそのPLMよりも早い番号です。
この個体には「保証書」(=Warranty)が付いていないようなので、詳細はなんともわかりませんが、
ケース番号以外のデータ(ムーブメント番号、販売年月日、リファレンスなど)が知りたいところです。
 
もしこれが94年~95年にかけて作られた草創期のランゲ1であったとすれば、
わたしの予想では、ムーヴメント番号はNo.202(3桁!)ではないかと思われます!!
この個体を見て、エキサイトされた理由はほんとうによく理解できます。

しかし、このソリッドケースバックを開けてみた際に、万一ムーブメント番号が3桁でなければ、
逆に、「このケースバック自体が後付けでは‽‽」という疑惑も湧いてまいりますので・・・
なんとも購入決断のしづらい個体であると思います・・・。

もっとも、草創期ランゲ1であっても、その事実に興奮するのは我々のような極々一部で、
市場評価にはなんの影響もないのが現状ですし・・・
こうなってきますと、GMTさんの“ダース”のギャランティーも見たいですね、
そのケース番号が知りたいところです!!



当探偵局としましても、110202という画像が出たからには、実働調査に乗り出さざるを得ません。
この時点でGMTさんの個体は、まだ正面写真が公開されたのみで、裏蓋の写真はHPに掲載されていませんでした。そこでわたしは、次なる裏付けを得るため、超法規ルートに手をまわし(笑)、GTMさんの“Darth"を短期間「売り止め」としてもらったうえ、写真撮影の許可もいただき、現場に乗り込んだのです!

その際の“証拠写真”がこちら・・・
ランゲ探偵局事件簿 “謎のDarth”・その第二回_b0159560_501974.jpg



・・・この個体、保証書によりますと、販売者はかつての南青山ブティックとなっておりましたので、1999年当時に同店に関わりのあった方々に話を訊きとりした結果、リファレンス番号が変わったその全貌がほぼ明らかとなってきました。そしてさらに、コトの発端となったアメリカ中古マーケットの“Darth"の意外な顛末も・・・

また、だいぶ長くなって参りましたので、
ひとまず、今宵はここまでといたしましょう。。。。。。
















以下、“謎のDarth”・<第三回>へ続きます
by a-ls | 2012-07-08 05:28 | Lange 1