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ユリス・ナルダン新作 マリーン トルピユール、世界最速の実機展示・発表会


リストウォッチの世界、過大評価されるブランドもあれば、もっと評価されてもいいのではと思うブランドもある。

個人的な感覚からすれば、ケリング参画以降のユリス・ナルダンは、もっと評価・注目を集めてしかるべき存在だと思うし、歴史的にも、このメゾンの開発力には目を見張るべきものがある。有名な例を挙げれば、当節あたり前となりつつある新素材、シリコンを世界で初めて腕時計の心臓部に搭載したのは、ユリス・ナルダンのシリシウム製脱進機を備えた腕時計「フリーク」だった。2001年のことだ。
また、今年からSIHHに参加したユリス・ナルダンが、創立以来の誇りとしてアピールしていたのは、3つの基本的アドバンテージ、①マニファクュール ②イノヴェーション ③サヴォア・フェール(ノウハウ)の3つで、それを『ユリス・ナルダンの3つのDNA』と表現するほど、自社開発と革新に力を注いできた。

そんなユリス・ナルダンから、2017年ジュネーブサロンでもお披露目されていなかった新作モデルを、『全世界に先駆け日本で発表いたします!』、という報を受け、駆けつけた次第である。


そこで発表されたのが、この「マリーン トルピユール」だ!





本題に入る前に、少し補足が必要かもしれない。

なぜなら、多くの方が、「ん? …新作? 昔ながらのユリス・ナルダンの定番モデル、マリーンクロノではないの?」とか、もしくはかなりなユリス・ナルダン通でも、「あれ、これはSIHHで発表済みのヴィンテージ・デザインのマリーン 1846モデルでは?」などと思う可能性がないとは言えないからだ。

まず、マリーン クロノメーターとの相違は、写りが悪い画像で恐縮だが以下のような感じである。



同じキャリバー(UN-118)を搭載しながら、比べられている43mmモデルとは1mm、昨年発表の「マリーン クロノメーター マニュファクチュール45mm」モデルからすると3mmのサイズダウンを達成。さらに図のシルエットを見ていただければ明らかなように、厚みにおいては3mmに近いスリム化を果たし、重さにおいては35gもの減量を実現している。
つまり、よりスリムに洗練されたデザイン性を持つ、新世代のマリーン クロノとも言えるモデルなのである。

では、今年発表されたマリーン 1846 (ブランドの 150 周年記念として発表された伝説の1996 年モデルをベースに、最新のシリシウム技術により制御されるUN-118 ムーブメントと、古典の象徴であるグラン・フー エナメル文字盤を合わせた、歴史あるユリス・ナルダンならではの新旧合体・温故知新的モデル!)との違いは如何か。それを見別けるのはさらに難しく、具体的には、エナメル文字盤とコインエッジをフィーチャーしたケースデザインの違いであり、すなわちそれは、若き新世代へ贈るための、コストパフォーマンスの差となってもいる。


●マリン トルピユール(左)SSケース・価格800,000円(税抜)、マーリン1846(右)SSケース・グランフーエナメル文字盤・価格1,140,000円(税抜)

フェイスの違いに注目するならば、「マリーン1846」の奥行きあるケースとの高低差に凝縮されたエナメル・ダイヤルが重厚感を感じさせるのに対し、より視覚的にも軽やかなインデックスを備えた若い世代へ向けの「マリン トルピユール」という、ユーザー層に対してのデザイン意図の差だろうか。

これでやっと、「マリン トルピユール」が、SIHH未発表の新作ということがご理解いただけただろうか。

実は、わたしもここまで書くにあたり、事実関係をいろいろと確認するため、ブランドの資料やHPを何度も見たのだが、書式や項目が統一されてなかったり、資料によって分類が違ったり、解かりにくいことこの上もなく(笑)、ここまで書くのに3日間余りを要している。しかもこの「マリーン トルピユール」の資料が事前にメディアに配布されていて、本サイトでも7/3付のニュース扱いで掲載ズミだったりで、全世界先行発表の真意はどうやら世界初の実機公開ということであって、そのインパクトはかなり削がれている。
時計の機構に関してはあんなにも革新的なブランドである一方で、製品のプレゼン能力などに関してはとっても不器用というこのアンバランスさは、変質的ブロガーにとっては、実は堪らない魅力だったりもする。時計作り以外は苦手かもしれない(笑)、"根っからの時計馬鹿メゾン”感が満載な仕事ぶりに接すると、そんな彼らの苦手な部分をともかく全力で解かりやすく紹介して差し上げたいと思ってしまう偏執的な質が当方にはあるので、このユリス・ナルダン、ちょっと全力で応援してみたい!

さて、「マリーン トルピユール」である!
モデルのコンセプトは、ここまで何度か触れたように、新世代へ贈る"マリーン クロノ”の新提案というイメージだ。





挨拶に立った輸入代理元ソーウンドジャパン代表取締役社長の岡部氏からも、まずユリス・ナルダンにおけるクロノメーター懐中時計の歴史が語られた。

揺れる舟の上でも常に水平を保つジャイロ機能を組み込んだボックス型のマリンクロノメーター(下の画像・右:展示ではデッキ・クロノメーターと表示)と、それを補正するための鍵付きのマホガニーのケースに収納されたデッキウォッチ(展示ではトルピユールと表示)も会場に展示されていたが、今回の新作「マリーン トルピユール」は、このデッキ・ウォッチ(下の画像・左)をイメージしたものだ。


20世紀の船舶の船長たちは、このポケットウォッチ型のデッキウォッチ(トリピユール)をポケットに忍ばせて颯爽と船を指揮していた。"21世紀の今、若い世代はこれからの人生への船出に際して、このマリーントリピユールを腕に付け、自らの人生を颯爽と生きてください”、というのがブランドの意図なのはここまで何度か触れているところではあるが、20世紀の世代としてまさに老婆心ではあるものの、このトリピユールの役割の詳細について一言付け加えさせてほしい(笑)。

船舶において、自らの位置を把握するうえで、時間と速度と方位は欠かせない要素であり、そのために船の主時計であるマリンクロノメーター(上の写真の右のデカい方)が精確であることは必須であった。
そのためトリピユール懐中時計は、一船舶に対し3個ずつ割り当てられていた(ドイツでは法律で義務づけられていたという)。その理由は、もしトリピユールを一個しか積んでいなければ、マリンクロノメーターと違ったときにどちらが正しいかわからない。しかし3個あれば、一個の時間が狂っても残りの2個で多数決的に補正できるという考え方だ。
それほど大事なものだったので、みだりにリューズや時分針を動かせないように、鍵のかかる箱に収納され、そのカギを管理したのが船長(もしくは一等航海士)だった。またこうしたマリーンクロノメーターとの関係性によって、ゼンマイの巻き忘れがないよう、パワリザーブ表示という機能が発展したのである。
これ以上書くと長くなるので、興味のある方は、以下の個人ブログを参照していただきたい。
http://alszanmai.exblog.jp/21850490/


テーマとスタイル(外装)に続いて、もうひとつ触れておかねばならないのは、このマリーン トルピユールの心臓部ともいえるキャリバーに、ユリス ナルダンのマニファクチュール・ムーブメントUN-118が搭載されているということだ!
2007年10月の開発着手から、延べ開発期間5,600時間、総計220個にもおよぶ試作サンプルを経て2011年に完成。2012年のバーゼルワールドで、絶対的主力モデル「マリーン クロノメーター マニファクチュール」に初搭載され、以後、ブランドの主力ムーブとして拡張・発展している名作キャリバーなのだ。

●UN-118 について解説するユリ・スナルダンのカスタマーサービスマネージャーの田澤氏


若い世代に向けた求めやすい価格帯の時計に、渾身にして最先端技術の自社ムーブを入れてしまうところ、これぞまさに、"根っからの時計馬鹿メゾン”感満載の、ユリス・ナルダンの良い仕事の証左そのものであると言える。

まずすごいのは、このキャリバーのエンジンにはユリス・ナルダンが開発した最新機構、ダイヤモンシル・テクノロジーが使われていることだ。"ダイヤモンシル”とは人工ダイヤモンドでコーティングしたシリシウムで、これをアンクルとガンギ車に採用することで、①衝撃に強い、②磁気を帯びない、③熱に強い特性を獲得、すなわち金属疲労という概念からの解放を実現している。さらなる利点を挙げるのならば、注油不要、腐食に強く、超硬質にして軽量、しかし弾性があるため複雑な形状デザインへの加工が可能。ヒゲゼンマイもシリシウム製で、調整機能にはフリースプラングを採用している。
●Cal.UN-118(自動巻き)。クロノグラフにも匹敵する246個もの部品で構成されており、パワーリザーブは60時間。100m防水を実現。28,800振動C.O.S.C.認定クロノメーター取得+6日間におよぶ独自の"ULYSSE NARDIN CHRONOMETER & PERFOMANCE(ユリス・ナルダン・クロノメーター&パフォーマンス証明)"にも合格。


下の画像は、文字盤側からムーブメントを見た図。3つのブリッジから成っていることがわかると思うが、これが非常に合理的な分割で、上側が時分の輪列、左がパワーリザーブ、右がデイトなどのカレンダー部分としてそれぞれが役割別に独立しており、つまりメンテナンスしやすく修理の簡便化までよく考えられた設計であるほか、これらの分割によって、高負荷がかかるパーツがないようにギアを組むことを可能としている。


一番大きなブリッジにカレンダーを納め、年次カレンダーなど新たな機能のための大きなスペースを保持することを可能とするなど、将来的な拡張性も非常に高い。
あ、そうそう、言い忘れているが、UN-118のカレンダーはリューズによる進み戻しの調整が可能なのだ!

ユリス・ナルダンが自社の技術力・製品力に自信を持つ証しとして、すべての時計に5年間の保証をつけているのだが、宣伝に不器用なユリス・ナルダンのこと、この情報もそんなに浸透していないかもしれない(笑)。

マリーン トリピユールのラインナップ展開は以下の通り。
PGモデル以外は100万円アンダーで、このクラスの機械式時計としてはおそるべきコストパフォーマンスを実現している!





個人的には青文字盤がヤバイ(笑)、しかしブレスも捨てがたい・・・。









【ユリス・ナルダン】関連記事。合わせてお読みください。

https://watch-media-online.com/sihh/377/ SIHH実機速報

https://watch-media-online.com/news/739/ マリーン1846ヴィンテージ

https://watch-media-online.com/news/806/  マリーン トルピユール プレスリリース






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# by A-LS | 2017-07-24 19:31 | 時計いろいろ | Trackback | Comments(0)