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ランゲ&ゾーネ2014新作・雑感まとめ①

今年のランゲ&ゾーネSIHH新作の雑感です。 ただ、昨日の新作受注会で写真を撮ってくるつもりだったのですが、会場は非常に盛況で、新作もあちらこちらのお客さんのトレイの上にあり、時計を並べて写真を撮ることが叶わなかったので、いつもの写真ですみません。
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※クリックで拡大されます。



今年の新作を語るうえで、まず押さえておきたいポイントは、昨年夏のリシュモン内の人事異動でジャガー・ルクルトCEOでありランゲ&ゾーネの“顧問的な”立場にあったジェローム・ランベール氏がモンブランCEOに栄転したということです。
ファビアン・クローネ氏の解任以降、ランゲ&ゾーゲの実質的トップの地位にあった彼は、良かれ悪しかれ、それ以前のファビアン路線を180度変えてしまったわけですが、今回の人事異動によって、ジェローム・ランベール氏から今度は現CEOのヴィルヘルム・シュミット氏へと権限が完全に委譲される形となるわけで、つまり、 「前回のジェロ―ム氏がそうしたように、シュミット氏のイニシアチブによるドラスティックな変革は起きるのか?」というのがその大きなポイントのひとつでした。

実はこの人事の内示は春には行われており、ジェローム氏は早くも4月からモンブランの時計部門の大改革に着手、そして今年のSIHHであのような劇的なラインナップを発表したのですから、シュミット氏にも自分の色を強烈に出すことは可能だったわけでした。 で、その結果はどうだったか……結論から言いますと、
「シュミット色はたいへんに色濃く出ているが、時計にはほとんど影響していない」、という禅問答のような結果となったと思います(笑)。
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※pre-SIHH会場でスピーチするシュミットCEO

シュミット氏の前職はBMW南アフリカのマーケティング&セールスの責任者でした。
今年のランゲ&ゾーネの新作群を見ていくうえで、どうかこの「マーケティング」というキーワードを頭の中に入れておいてください。


それではまいりましょう。今年の新作ポイント・雑感です。
全体としては、特に日本マーケットにとっては、概ね好印象だと思われますが、その大きな原因のひとつは、1815のリサイズなどにみられるサイズ感でしょう。


ポイント①サイズ・ダウン

新作の「1815トゥールビヨン」が39.5mmという40mm以下のサイズで発表された点、そしていままで40mmだった1815を38.5mmという絶妙の大きさにリサイズした点などは、相対的に手首の細い日本人の、特に近年の大型時計に辟易していた層には非常に好印象であり、今年のランゲの最大のポイントのひとつであることは間違いありません。
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まぁここ数年は薄型時計の相次ぐ市場投入など、コンパクト化が業界のトレンドでもありますから、それに乗っているといえばそういうことなのですが、ただでさえ製造本数の少ないランゲが、1815にわざわざ2つのサイズを用意した意味、大きなサイズとスモール・サイズを好みで選択できる、つまりこれぞまさに「マーケティング」的な発想に他なりません。



ポイント②ライン化の促進
昨年、今年と、1815ラインを重視した新作が出ているように思われますが、その価格帯は軒並み高額ラインに設定されています。
結果として、ほぼ同列に見えていたサクソニアと1815のラインにいまや完全に差がつき、サクソニアがエントリー・ラインとして残り、1815は中級ラインに分離したように思えませんか?
  シュミット氏登場以降のランゲでは、このようなラインごとの特徴や役割が明確化してきた気がします。

現状での主なラインの特徴を見ますと…
サクソニア:「エントリー」「シリンダーケース」「ドイツ的」「バウハウス的」 「レディース」
1815   :「中級機」  「洗練されたライン」 「懐中時計フェイス」
LANGE1 : 「アイコニック」  「アシンメトリー」 「アウトサイズデイト」
リヒャルトランゲ: 「観測・計測時計」 「精度重視の機構」 「ヒストリカル」
ツァイトベルク  :  「デジタル表示 」

シュミットCEO自身、昨年12月のpre-SIHHでのスピーチで、
「今後はこれらの既存ラインを発展させていきたい。現存のライン以外の新作が突然発表されるようなことは、すぐにはないと思う」という発言を残しています。

こうした分類的といいますか、ラインの社内ブランド化的な発想は、実は自動車業界や家電業界でごく一般的な発想で、たとえばBMWの2シリーズ、3シリーズなどという考えにも似ていますし、そしてこれもまさに「マーケティング」的な発想ではないでしょうか。

さらにいうのなら、今年のSIHHでは、これら主なラインのすべてに新作があるのです。

1815 「トゥールビヨンPT&PG」 「リサイズ1815・3色」
Lange 1 「パーペチュアル・カレンダー・トゥールビヨンPG」 「ランゲ1ムーン3色」
リヒャルトランゲ 「テラルーナPR&WG」
ツアイトヴェルク 「ストライキング・タイムPG」
サクソニア「MOP WG」 

見るとわかりますが、たとえ色違いとはいえ、これらのラインのハイエンドもしくはそれに準ずるモデルを揃えたことで、
完全な新作はそれほどないのにもかかわらず、意外と満足感が高い印象を得られている気がします。

そして、こういう手法や効果を、われわれは「マーケティング戦略」もしくは「マーケティングの勝利」と呼ぶのです(笑)。



つまり、ここで挙げたポイント①と②は、マーケティングのオーソリティーとしてランゲに招かれたシュミット氏の面目躍如ともいえるポイントであり、これが今年のランゲに非常に色濃く表れた特徴のような気がします。
さて、ここまでマーケティングの話ばかりで、時計そのものには触れられていないのですが、
ポイント③として、やっと機械のはなし、「面白時計の復活」 を挙げたいと思います。




このポイント③に関しては、またちょっと長くなる予感がしますし(笑)、新作写真の撮影にもう一度トライしたいので、
一度、回を改めさせてください。










by a-ls | 2014-04-13 09:09 | ランゲ&ゾーネ