Only Watch 2013の傾向 I ~装飾
しかしその出品作品の画像をみていると、そこに大きく2つの傾向があることに気が付きました。
①ダイヤルやケースを装飾し、芸術的な付加価値を加えた時計。
②ムーヴメントや駆体の全部または一部が表側から覗け、機械的な構造をデザインにも取り込んだ作品。
ダイヤルを装飾する方向と、逆にダイヤルをシースルー化していく方向、一見すると両者は対照的な方向性に感じるのですが、オンリーワンの限定時計という希少価値を考えたときに、業界を代表する33のブランドのうち、その7割近くが選んだ方向性がこの2つに偏ったということは、何を意味するのでしょう…。
ま、結論めいた話はは先に譲るとして、まずは個々の時計を実機でみていきましょう。
Blancpain Women, Only Watch 2013
ブランパンからのレディース・ウォッチ。ブルーMOPとダイヤ・インデックス、そして象嵌。裏のローターにもモチーフとなっている鳥をエングレーヴィングするなど、「Women」というストレートなタイトルに恥じない凝った作品。
Chronoswiss The Three Apes
レギュレーターに代表される厳格さのイメージの強いクロノスイスがグランフー・エナメル+シャンルベという装飾文字盤の最先端にいどみました。すでにお分かりのように、モチーフは「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿。裏側からはこのブランドの得意芸である"魅せるムーブ”が満喫できます。
Laurent Ferrier Galet Classic Only Watch
表からキャリッジを見せない控えめなトゥールビヨンを包んでいるのは、モナコの紋章を描いたグランフー・エナメル文字盤。
Van Cleef & Arpels Lady Arpels Une journée à Monaco
このブランドだけは装飾文字盤でなくてはならいでしょう(笑)。「モナコの一日」と名付けられたこの作品は、ターコイズをベースに、レトログラード部分はラピスラズリとホワイト・ゴールド、そして下半面が白蝶貝の4層からなる細緻な文字盤がいかにもヴァンクリらしい作品。
Jaquet Droz The Loving Butterfly
過去ブログにて紹介済みですので、そちらを参照してください。
Chanel Première Flying Tourbillon
実は機械的にも一番スゴイかもしれないフライング・トゥールビヨン。マドモワゼル・シャネルが愛好した椿の花をモチーフとしたトゥールビヨン・キャリッジが、磨き上げられた漆黒のセラミック・ダイヤルをブリッジ無しで舞うというミステリアスな一本。ルノー・エ・パピがこのシャネルのためだけに製作したキャリバーを搭載。
Chopard L.U.C Tourbillon Only Watch 2013 Edition
貴重なPTケース。文字盤にエングレーヴされたひし形やムーヴ裏のらせん形はDNA染色体をモチーフとしており、このチャリティー・オークションの主眼である筋ジストロフィーの治療研究の象徴としています。
Corum Ti-Bridge 3-Day Power Reserve
表は得意のブリッジのアレンジですが、装飾部門に加えたのはそのケース仕上げ(下の画像を参照)によります。チタンと紅金を合わせ、ケースサイドに、ギリシア神話に登場する名医であり現在も医学の象徴的存在となっているアスクレビオスを描き、こちらも筋ジストロフィーの撲滅を謳っています。
De Bethune Skybridge
青の鏡面磨きを施されたグレード5チタンが表わす満天の夜空、そこにちりばめられた宝石は、シャルル3世が1857年11月19日に初めてモナコのナショナルデーを祝った日にモナコで見られた星空を再現しています。
Frédérique Constant Double Heart Woman Set
時計、イヤリング、ネックレス、ペンダントとのセットだそうです。
Backes & Strauss The Victoria Princess Red Heart Watch
1789年創業、ロンドンを拠点とする世界で最も歴史の古いダイヤモンド会社からの作品。
Julien Coudray 1518 "Draw me a happy child" by the Children of the world
元ブレゲ出身のウォッチメーカー、ファビアン・ラマルシュが2012年に立ち上げた新しいブランド。この作品はスイスの5歳の児童の描いた絵をムーブ裏に彫りこんでいます。
Vacheron Contantin Patrimony Traditionnelle World Time for Only Watch
このカテゴリーのトリを飾っていただくのはヴァシュロン・コンスタンタン。ワン・オフのパトリモニー・ワールド・タイムですが、メティエダールで名高いヴァシュロンの装飾技法をさりげなく注ぎ込んだスペシャル文字盤。中心のヨーロッパ大陸の造形がクロワゾネ・エナメルで、モナコ公国の位置にはラウンド・ダイヤが嵌め込まれています。
いかがだったでしょう。
過去、当ブログでも、こうした装飾文字盤に関しては、エナメル文字盤を中心に広く紹介してきましたが、最近、特にこの2年ほどは、その紹介事例が飛躍的に増加しているというのは実感として感じます。
各ブランドとも、この分野の技術革新・技術復興へ積極的に投資を行った成果ともいえます。
というわけで、出品された33品中、なんと13品もの時計が①に分類されたのです。
そして続いてカテゴリー②に行きたいのですが、
これを書いている間に2回もPCがフリーズし、書き直しを含め、トータルで恐ろしいほど長い時間をこの記事に費やしておりますので、本日はここで一度〆させていただき、
②ムーヴメントや駆体の全部または一部が表側から覗け、機械的な構造をデザインにも取り込んだ作品群は、次回に続くとさせてください。
疲れたぁ~~~~。