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a-ls 時計(Mechanical Watch Users News) blog.

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1815Up&Down検証

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3月10日、わたしたちが銀座のブティックで“ランゲ座談会”に興じていたまさにその日(笑)、ホテルオークラ福岡で開催されていたイベント「ランゲツァイト」にて、SIHH新作から1815U&Dの全色モデルとグランドランゲ1のWGケース黒ダイヤルが国内初披露されておりました。

世界で唯一オーナーズクラブがあるということで、去年までの日本は3年連続の第一番海外公開地(ヘッドライナー)だったのですが、今年は新しくオープンしたシンガポール(東南アジア初ブティック)、パームビーチ(アメリカ大陸初)の両ブティックにその地位を譲り、世界5位の公開に甘んじたわけです。
しかし、さすがランゲさん、日本マーケットの重要性を評価してくれたのか、パームビーチからドイツへ戻す行程中の新作サンプルの一部を日本で“途中下車”させ、一日限りとはいえ、福岡で限定公開してくれていたのです。パチパチ(拍手)。
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ずっしり!
旧作の1815U&Dよりも、新作は明らかに重厚感があります!!
このテーマに関しましては10日の銀座ブティック新作座談会でも大いに盛り上がりましたので、以下、座談会で検証された新1815U&Dの“すごいところ”座談などをピックアップしつつお届けしたく思います。

今回の新1815Up&Downの最も素晴らしい点ですが、一番は1815ムーブメントのブラッシュアップ、まずはこれに尽きます。
たとえば、下は旧1815U&Dの、ゼンマイがほどけ切った(つまり止まっている)時点のインディケーター部の拡大写真ですが、指し示された数字の何と自由なこと(笑)!
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旧作U&Dを3本集めて止めてみましたが、
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これらのみなさんはどちら様も、「AB」位置をほぼ無視して止まっておられます(微笑)。
ある意味微笑ましくもあったこの旧1815U&Dインディケーターの自由っぷりですが、新作1815Up&Downではこんな“曖昧さ”は許されないのです。ゼンマイがほどけ切った時、パワリザーブはきっちりとゼロ(=AB位置)を指し、しかもそれと連動した秒針も必ずゼロ秒の位置に帰零して止まるよう組みあげられているのです。
SIHH会場でも、どのサンプルも停止位置は60秒(=0秒)&ABでした!
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こうしたゼンマイ解放時の0秒(=60秒)帰零、この機構を搭載していることで最も有名なランゲは、あの「プール・ル・メリット」なのです!!
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検証しましょう。上の写真は自由な時間で止まっている歴代PLMですが、スモールセコンドの針はきっちり0秒で停止しております。
※PLM以外にこの機構を搭載しているモデルをご存知の方がいらっしゃいましたら御教授願います。

SIHHの会場で最初に復活1815の値段、「YGで234万、WGで245万」を聞いた時、実は“少し高いかなぁ”と思った自分もいたのです。もっとも1815の3針YGケースがすでに190万でしたから、無理は重々承知なのですが、自分の中での1815は、どのブランドよりもしっかり作られたエントリー・モデルという(旧1815)のイメージが強く、できることならば100万台の価格設定であって欲しかったのです。
パワーリザーブも旧作の48時間から72時間へと24時間も延び、しかもケースのサイズダウンやケースデザインのリニューアルも特筆点ですが、さらに加えて、このようなPLM並みの規格で厳格にギッチリと組み上げられたムーブを積んでいることを知った今となると、むしろ“この価格でもお買い得では”とさえ思ってしまうわけです。




次なる評価点は、旧作U&Dはおろか、新作1815ムーブさえ超えた“仕上げ”の美しさでしょうか。
まず目を引くのは、懐中時計時代を想起させるような、4分の3プレートに組み込まれたサンバースト仕上げが美しい巻上げ用の歯車の可視化でしょう。
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これはサクソニア「フラッハ」でも採用されておりましたが、フラッハは同時にシャトンを減らしたこともあり、一部マニアからボコボコの不評をかったムーブでもありました。

しかし今回は、フラッハの屈辱に対する意地を見せるかのように、香箱をみせたうえに、パワーリザーブ用に増えたギア分のシャトンを、これでもかと美しく配置して見せたのです。
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過去のブログからの転用となりますが、もう一度過去作品との比較をしておきます。
まずは旧1815U&D、キャリバーL942.1のムーブ裏。
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で、こちらがNew1815のキャリバーL051.1のケースバック。上と似てますね。
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そしてもう一度、こらが今回の1815U&Dに採用されたL051.2です。
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見てお分かりのように、これはもう同じキャリバー番号の枝番の変更などでは済まされないくらいの進化が加えられていて、本来であれば新しいキャリバー番号がついてもよいくらいの代物なのです。

ワンモデル・ワンムーブを売りにするブランドからすれば、充分に新ムーブを名乗る資格があるムーブを、あえて枝番処理としたその理由、しかも同型ムーブを積んだNew1815よりもケースサイズを1mm下げてきた理由は何なのでしょう。なんかわたしはそこに、フラッハ時にムチャクチャに言われたことに対するジェロームの意地みたいなものを感じるのですが・・・、本当のところはいかがなのでしょう。
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さて、最後にUP&DOWNという名称に関してですが、ランゲ発行のプレスシートによりますと、
『ぜんまいが完全に巻き上げられた状態をドイツ語でAUF(=アップ)と表示し、パワーリザーブの残量がなくなった状態をAB(=ダウン)と呼ぶこのパワーリザーブ表示は、A.ランゲ&ゾーネでは伝統的な方式となっており、1879年には特許を取得しています』と、書かれております。
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実はこれ、今までわたしが認識していた説とやや異なります。
ま、あくまでも別説としてではありますが、わたしがあるドイツ人の旧友から聞いたことのあるU&Dの由来を挙げておきます。
『4時位置のスモールセコンドの針は0から60まで時計周りに上がっていく(=Up)のに対し、8時位置のパワーリザーブの針が指す数は、AUFからABまで反時計回りに下がっていく(=Down) ので、左右ふたつのインディケーターの針の様子から、このようなフェイスの時計をUp&Downと呼ぶのだ』と、わたしはかつて教わったことがあるのですが・・・・。
こちらも、本当のところはいかがなのでしょう??





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いろいろと書いてきましたが、ランゲ座談会の結論といたしましては、とにもかくにも新1815UP&DOWNは、実に実に素晴らしい作品ですということですね!!!
by a-ls | 2013-03-14 11:54 | ランゲ&ゾーネ