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2012新作雑感3 LANGE 1 TOURBILLON PERPETUAL

さて、途切れ途切れのランゲ新作の雑感ですが、ようやく今年のハイライトピース、ランゲ1トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダーまでたどり着きました。
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ランゲ1デイマティックをベースにした実に美しい時計ですが、ほぼ3000万円(PT)という高額ぶりはちょっとしたSF小説の世界のようで(笑)、寄せられている賞賛も、所有という現実味を感じづらいレベルからの声が多い気がします。
この時計を語る際に、まず確認しておかなければならないのは、この作品の開発開始時期でしょう。
過去ブログをご覧いただければおわかりいただけると思いますが、L082.1というキャリバーナンバーから、この作品の開発着手は2008年前半であることがわかります。この年、2008年4月のSIHHで発表されたランゲの新作はカバレット・トゥールビヨン。そのPTケースの日本定価は3280万円でした。つまり2008年前半とは、いわゆる“時計バブル”の、まさにピーク時期なのです。

こうした時代の流れを思うとき、この作品には、
“コストのことはとりあえず無視しても、ランゲ・クォリティーによって考え得る最高峰の永久カレンダーを製作しよう”という製作背景があったのではないかと思うのです。

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復興ランゲの象徴といえるランゲ1のフェイスをベースに、先行したランゲマティック・パーペチュアルを超える永久カレンダー時計の開発となれば、まずトゥールビヨンの搭載は必須として、12時ジャストにすべてのディスクが切り替わる新機構を加え、もしかしたら開発当初にはもっともっと多くの複雑機能の搭載が予定されていた可能性もあります。

・・・しかし同年9月15日、時計業界のみならず世界経済は、リーマンショックとして知られるショッキングな出来事に見舞われ、その後の世界の消費動向は一変してしまうこととになります。
現在発表されているモデルで、2008年後半以降の着手を示すムーブメントを挙げてみるとき、ランゲもその影響を色濃く受けたことがわかります。

サクソニア年次カレンダー(L085)、サクソニア・オートマチック(L086)、サクソニア・デュアルタイム(L086)、サクソニア・フラッハ(L093)、新型グランドランゲ1(L095)・・・、以上です。

現時点まで、リーマンショック後に開発着手された超ハイエンドウォッチの発表はなく、むしろお買い得(悪く言う人からすればランゲ・クォリティーを満たしていないと断罪されるような…苦笑)機種が並びます。
ランゲ1トゥールビヨンに永久カレンダーという複雑機構の搭載に着手した年の後半に、サクソニアの年次カレンダーの開発を始めざるを得なかったという不自然な事実ひとつを見ても、2008年という年の異常さというか、前半と後半とではまったく違う流れがあったことがわかります。

こうした高額にもかかわらず、何人かの方からこの作品の購入相談を受けました。
素晴らしいことです!!

それに対して、
ポジティヴな意見として、ここまで書いてきたような理由から①、②の2つを挙げます。
「伝統の進化系」をスローガンに進化を続けてきたランゲクォリティーの、これはそのピークに位置する作品にして(その製作背景が変化してしまった今となっては)、かつその最終作品となる可能性がある。 
ランゲにとって非常にエポックメイキングな年となるであろう2012年発表の、しかも唯一の限定作品である。
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また、ネガティヴな意見としては、次の③、④を付け加えます。
ランゲは新機構の開発コストを最初のモデルで回収しようとする傾向がある気がするので、後々になって同じような機構で、よりお買い得なモデルが出ても後悔しないでいられるくらい惚れ込めるかどうか。
オートマティックのトゥールビヨンというこの作品のベース機構が、必要不可欠であるという思い入れが持てるかどうか。

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とはいえ、まぁなんといっても最大のウィークポイントはその価格なわけです。
『1ユーロ100円近辺の今の時期で3000万円弱とすれば、1ユーロ150円超のリーマンショック前であれば4500万円以上で売るつもりだったのか?」という声もありますが、わたしの答えとしては「たぶんイエスだったろう」と、そう思うのです。
もしリーマンショックがなく、いまもまだ時計バブルが右肩上がりで続いていたならば、充分あり得る価格だったでしょうし、それほど当時の市場は実勢コストと乖離し、狂っていた(狂気と娯楽は紙一重のところがあるので、そのぶん楽しいこともあったのですが…)ということではないでしょうか。

さて、アメリカの住宅バブルを背景とした世界的な好景気を背景に、高品質かつ強気な価格設定&商品構成を推し進めた“ファビアン・クローネ政権”でしたが、リーマンショックを機に、エントリーモデルの比重を増やして顧客拡充へと大きく舵を切ったものの、翌2009年の米市場の大凋落など全世界的に売り上げを落とし、同年9月ファビアンの辞任によってその政権は瓦解…。リシュモンはその秘蔵っ子であるジェローム・ランベールの管理の下にランゲの新戦略を構築し直します。
(この辺りのことを書き始めると、延々と紙幅を必要としますので、ここでは多くは語りませんが…)、こうして、ファビアンの高価格政策とは180度逆のマーケティング戦略が急激に推進された結果として、2008年~2011年までのランゲのハイエンドピースの価格は、著しくその整合性を欠いたものとなりました。

ま、ひとことでいえば、2008年までのハイエンドはやや高すぎというか、競合するスイスの他ブランド等と比して相対的に設定された価格であり、逆に2009年~2011年は多分にサービス価格的なイメージがあるわけです。
もちろん、ファビアンの戦略にはファビアンの良さがあり(品質・探求心)、ジェローム戦略にもジェロームの良さ(価格・管理)はあります。が、しかしその両立は困難なのです。
ところが、今のランゲに対する不満の声を総括すると、「ジェロームの価格を維持しつつファビアンの品質に戻せ」というようなご無体な声だったりもするわけでして、そういう流れの中でのこの3000万円という、決して安くない価格設定は、わたしにとっていろんな意味でエポックメイキングな2012年の注目すべき一項目(サービス価格の終了=クラフトマンシップ重視の復活?に通づるのかなぁ~)という見方もあるわけです。

新CEOに就任したシュミット氏が仕切る初めてのSIHHでもあり、そしてランゲ1もダトグラフも、そしてサービス価格まで、それら様々な要素がまさに“ゼロ・リセット”された年、それは今後のランゲの方針にどのような道筋をつけて展開していってくれるのか、じっくりと注視していこうと思う次第です。

というわけで、実はここまでの自分は、前回のブログで言うところの“ランゲに甘い自分”なわけでして(笑)、
ここからはランゲ、特にランゲ1ファミリーにはうるさい、シビアな自分が一言モノ申すわけです!!
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たとえば、
『ランゲ1という名を冠するのであれば、ブリッジは4分の3プレートであって欲しかった!』
『ランゲ1という名を冠するのであれば、デイトを進めるブッシュボタンがついていて欲しい!!』などなど、

で、なぜそうはならなかったのかという仮説もあるのですが、そこら辺にまで踏み込むと、
すでに、いち時計好きというブログの範囲を超えた内容になっている気もするわけなのです(恥・・・・




ま、ブログごときにそんなに熱くなってどうすんの・・・と言われたり、
こういうのは誰かから原稿料もらって仕事として書かないといかん・・・・と諭されたり(笑)
・・・・・・ちと気恥ずかしい自分もいたりするので、
今回のランゲ1トゥールビヨン・パーペチュアル・カレンダー雑感は誉めたまま、
ある意味、誉め殺しで筆を置きましょう。
(・・・え、そんなに誉めてないですって??・・・・、ん、そんなことはないです、これは渾身のホメ・ブログです!!!)























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でも最後のオマケとして、
シビア部分のヒントだけ書き散らかしますと、
この作品への幾多の意見やら謎な部分を紡ぎ合わせていくと、
ひとつの根本的な疑問に行きつきます。
すなわち・・・・
「このランゲ1トゥールビヨン・永久カレンダーは、なぜランゲ1デイマティックをベースにしたのか?」
ということです。

で、この疑問に幾つかの仮説をなぞらえて考えますと、もっとも根源的な疑問、
「そもそもベースとなったこのデイマティックが、なぜ2002年の開発開始から、
2010年の発表まで、8年もの月日を要したのか?」

にまで行き着いたりもするのです・・・・・・・・・。

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こちらはデイマティックの裏画像
ぢぃ~~~っと見つめながら・・・・・、ふぅ、・・・今宵はここまでといたしましょう・・・。



次回雑感は、
もし時間があればの話ですが、
禁断のフラッハWGに触れるかもしれません!(爆
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Commented by D.スプリット at 2012-02-13 13:04 x
ALSさんこんにちは!このタイムピースのコメントを待ってました!ありがとうございます。ALSさんの苦悩といいますか、複雑な心境がよ~く伝わってきます。このタイムピースは本当に悩ましいです。。
Commented by かのじ at 2012-02-13 17:23 x
お書きの通りです。僕はパテックフィリップに肉薄する作品の完成には常に肯定的です。でもブランド戦略には誤りがあって、デイマチックに始まる本作には、ランゲ1の名前を与えるべきじゃなかった。ランゲデイマチック、ランゲデイマチックトゥールビヨンパーペチュアルカレンダーがよかったなあと思うのです。
Commented by A-LS at 2012-02-15 02:10
D.スプリットさん こんばんは
本当に悩ましい一本ですね。24日から銀座ブティックで展示があるそうですが、一度腕に乗せたら、まったく違うコメントを言い始めるかもしれません(笑)
Commented by A-LS at 2012-02-15 02:16
かのじさん
最近のランゲのネーミングには、わたしもちょっと違和感(長すぎるというも含めて)を感じております。いつかその辺りの考えもまとめて書いてみたいと思っておりますので、いろいろとご意見をお聞かせいただけたら嬉しいです
Commented by かのじ at 2012-02-16 00:52 x
長くてもいいかなと思うのですが、聞いてぱっと品物が思い浮かぶのがいいですね。ドイツ製品には設計思想とラインナップに確固たる一貫性がほしい。リヒャルトランゲとリヒャルトランゲPLMとリヒャルトランゲトゥールビヨンPLMがあれほど違う時計だと困ります。ダトグラフのようでそうではないダブルスプリットは良かった。今回の瞬時切り替えパーペチュアルカレンダーは何か特別なドイツ語の名前があればよかったなと思います。
Commented by a-ls at 2012-02-17 01:27
かのじさん 貴重なご意見有り難うございました。名前を聞いて製品が思い浮かぶのは確かに便利ですが、たとえば今年の場合ですと、ダトグラフの名がつくことで、どうしてもオリジナルと較べてしまい、オリジナルに強い思い入れのある人にとってはかえってマイナス・イメージにつながるとか、そういう話も聞きます。なかなか難しい問題ですね。
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by A-LS | 2012-02-12 12:43 | ランゲ&ゾーネ | Trackback | Comments(6)