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No.42500 よもやま話 ①

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みごとに修復を終えたNo.42500ですが、下の写真は、No.42500が作られた直後(1902年)に撮影された貴重な写真です。

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最初の所有者はウイーンの貴族ハインリッヒ・シェーファー。特注で作られたものです。
1845年の創業から、生産ラインを軍用時計に切り替える第二次大戦までの約100年の間に、ランゲはおよそ10万個の懐中時計をつくりました。
その中で、このNo.42500は最も多くの機能を搭載し、しかも、史上ただ一個しか作られなかった複雑時計でもあります。
Martin Huber の著作で、Lange製作の全複雑懐中時計を機構別にリスト化した「Die Lange Liste」でも、このクラスの時計(グラン・ソヌリ、プチ・ソルリ、無音切り替え可能なミニッツ・リピーター&フドロワイアンテ付ダブルスプリット・クロノグラフ&永久カレンダー付きムーンフェイズ時計)はNo.42500ひとつであることがわかります。

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このひとつ下のクラス、No.42500から“aiguille foudroyante(フドロワイアンテ)”を除いたものは、1901年から1928年までの間に、全部で9個が製作されています。

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驚くべきことは、この下のクラスの初号機No.41277が作られた1年後の1902年に
No.42500が製作されていることです。しかも、それ以降、No.42500と同等クラスの懐中時計が作られることはありませんでした。
1901年に作られたNo.41277は販売価格3900マルクですが、その一年後に製作されたこのNo.42500は、なんと5600マルクなのです。この価格差をみる限りにおいても、“フドロワイアンテ”の機構の大変さが想像されます。

ちなみに、今回来日された時計師ヤン・スリーヴァ氏によれば、当時の5600マルクとはドレスデンに別荘が一軒買えたくらいの金額だそうです。
試みに、当時のマルクがどのようなものかを知る目安として、貴族でなければなかなか買うことのできなかった通常のランゲ懐中1個の価格を調べてみました。

1Aで450マルク、1Cで250マルク、普及用モデルのDUFで130マルクくらい。
(わたしの手元にあるアーカイヴ1900年~1910年製作時計での平均値)ですから、このことだけでも、その高額ぶりがわかります。

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3~4年ほど前、この下のクラス9個のうちの1つ、No.46177がクリスティーズに出品された際のカタログの1ページです。4~5ページを費やして、貴重性や機能を説明してありました。
おぼろげな記憶ですが、最終的にはだいたい85万ユーロくらいで落札されたのではないかと記憶しております。






 現在このNo.42500は、おおもとの購入者であるウイーンの貴族(ハインリッヒ・シェーファー)宅に長年家政婦として勤めていたご婦人の所有となっています。彼女が語ることによりますと、第二次大戦前にご婦人がシェーファー家の勤めを辞した際、シェーファー家の奥様が彼女の奉公に対し、「もはや動かないので、時計としての価値はないと思いますが、ケースは金ですから、その価値はあるでしょう」といって渡されたそうです。
 以来その時計は、何年間もそのご婦人の家の地下室に放置されておりました…。

 時は流れまして2001年…。いまはすっかり老婦人となられましたこのご婦人が、お隣に住んでいる若い夫婦と話をしている時、この夫婦が、家にあった古い懐中時計を修理に出した話をしました。その際にこの老婦人も、昔ご主人様からいただいた時計のことを思い出し、「わたしも古い懐中時計を持っているのだけど…、修理する価値があるかどうかを知りたいわ」と言いました。
 そこでその若夫婦は、この老夫人の時計を、当時「ランゲ&ゾーネ・アトリエ」と呼ばれていた工房(現在の「ランゲ&ゾーネ・ヒストリカル・ウォッチ・ワークショップ」の前身)に持ち込んだのです。2001年9月21日のことでした・・・・・。
こうして、発売から99年を経て、No.42500は“発見”されたのでした。
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by a-ls | 2010-11-04 16:06 | ビンテージ | Trackback | Comments(0)